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【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol.41 ドイツはカーニバルの季節。そして、整形靴Ausbildungを終えた友達の話

2026/02/28


ドイツではカーニバル(Karneval)の季節が始まりました。
ライン川沿いの地域では一年で最も盛り上がる時期です。仮装をして、音楽が鳴り、ビールを片手に街が賑わいます。暗く長い冬が続くドイツに、ようやく色が戻る瞬間です。
そんなお祭りムードの中、個人的にもう一つ嬉しい出来事がありました。
友達が整形靴(Orthopädieschuhtechnik)のAusbildung(職業養成課程)を終え、国家試験(Gesellenprüfung)に合格し、正式なGeselle(国家資格職人)になりました。3年半の努力の末に掴んだ資格です。
今日はそのリアルな話をインタビュー形式でまとめます。


Q1. なぜ整形靴(Orthopädieschuhtechnik)のAusbildungを選んだの?

まず整形靴の知識をどうやったら学べるかを調べました。
1. 都内の整形靴技術を学べる学校に通う
2. 神戸の整形靴専門学校に通う(現在は閉校)
3. ドイツでAusbildungをする

どれを選んでも費用は大体同じでした。最初は教育訓練給付金を申請して神戸の専門学校に通うことを検討していました。ドイツでのAusbildungはエージェントの応募条件に年齢制限があり難しいと思っていましたが、ダメもとで連絡を取ったところOKをもらえました。同じ費用なら本場ドイツに行くべきだと決めました。日本の整形靴の知識や技術はドイツ由来のものが多いからです。

Q2. もともと興味があった?

いいえ、興味はありませんでした。最初は紳士靴職人を目指していました。

木型を削る、設計するうえで最低限の足の知識や解剖学の知識は必要だと思っていました。好きな靴メーカーが解剖学や整形靴の知識を靴づくりに反映していたことも影響しているかもしれません。

Q3. 他の職業と迷った?

迷いませんでした。

Q4. 最終的な決め手は?

自身の足に痛みと問題を抱えたことです。

工場勤務中に足底部に痛みが発生し、扁平足と足底腱膜炎と診断されました。義肢装具士作製のドイツ式パーソナルアインラーゲンを処方してもらい、完全治癒ではないもののかなり楽になりました。
なぜこの処方になるのか。適切な位置や高さはどう決めるのか。その疑問が強くなり、この道を選びました。

Q5. 応募から合格までの流れは?

まずエージェントにコンタクトを取り、志望動機を書面で提出。その後面談があり参加可否が判断されます。参加OKになれば渡航準備に入ります。
主な準備は参加費用と現地生活費の確保、ドイツ語の事前学習です。参加費用を貯めるのに2年かかりました。

Q6. ドイツ語に不安はあった?

不安しかなかったです。

Q7. 3年間を一言で表すと?

地獄です。ドイツ語が難しすぎました。

Q8. 1年目・2年目・3年目の違いは?

1年目と2年目は授業についていき、課題をこなし、落第しないように試験対策をすることで精一杯でした。
3年目は授業内容と職場の仕事がリンクしてきて少し楽しくなりました。ドイツ語も多少理解できるようになり、仕事でできることも増えました。

Q9. 学校と職場の割合は?

1・2年目は週2日学校、週3日職場。3年目は週1日学校でした。

Q10. 学校ではどんな授業があった?

医学的知識(解剖学、生理学、病理学、歩行分析)、技術的知識(生体力学、設計、製造、加工、材料)、ビジネス・法規(保険制度、品質管理、経営、顧客対応)を学びました。

1・2年目はドイツ語、英語、政治、宗教、スポーツもありました。

Q11. 実際にどんな靴を作った?

職場ではアズビが整形靴を作る機会は少なく、主にゲゼレが担当していました。

卒業試験では排骨神経麻痺患者の整形靴2足、試験テーマに沿った整形靴1足、病態に即したアインラーゲンを製作しました。

Q12. 一番思い出に残っていることは?

合格後に職場へ戻ると、サプライズでケーキを用意してくれていました。その時に初めて「頑張ったんだな」と実感しました。

Q13. 一番大変だったことは?

ドイツ語です。今もです。

Q14. Ausbildung中の給料は?

毎年約100€ずつ上がります。

1年目 総支給750€ 手取り639€ 補助金200€
2年目 総支給850€ 手取り715€ 補助金150€
3年目 総支給1000€ 手取り833€ 補助金68€
4年目 総支給1200€ 手取り991€ 補助金68€

Q15. 生活はやっていけた?

補助金のおかげで助かりましたが、2年目までは貯金を崩して生活していました。3年目でやっと少し余裕が出ました。

Q16. 国家試験はどんな形式?

中間試験は筆記と既製靴加工2足。
卒業試験は筆記(専門+社会経済)、実技(整形靴1足、アインラーゲン)、口頭試験(顧客対応)です。

Q17. 一番緊張した瞬間は?

合格発表の時です。

Q18. Geselleになると何が変わる?

国家資格保持者となり通常の労働契約になります。給料は約2倍。処方箋を読み設計判断ができるようになります。EU圏で通用する資格です。

Q19. これから目指す人にアドバイスを1つ

ドイツ語の勉強です。他はどうにでもなります。

Q20. 3年前の自分に声をかけるなら?

なんとかなるから心配しすぎるな。

○私の感想
正直に言って、心からすごいと思いました。海外で、しかも第二言語で0から国家資格を取る。
それだけでも想像以上にハードです。語学、専門知識、実技、国家試験。どれか一つでも大変なのに、それを同時にこなす3年半。「地獄だった」と笑いながら言っていましたが、その裏には相当な努力と覚悟があったと思います。特に印象に残ったのは、「ドイツ語だけは逃げられない」「健康維持が一番大事」という言葉です。どの分野もですが、海外で挑戦するということは、技術だけではなく、メンタルとの戦いでもあると改めて感じました。そして、合格後に職場でケーキを用意してもらった話。あの瞬間の「頑張ったんだな」という実感は、何にも代えがたいものだと思います。私自身もドイツで働いている身として、強く刺激をもらいました。挑戦している人は、本当にかっこいい。このインタビューが、これからドイツでAusbildungを目指す人、海外で何かに挑戦したい人の背中を少しでも押せたら嬉しいです。













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