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【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol.18 理学療法士の免許の書き換え真っ只中の日本人理学療法士

2024/03/27


 皆さんこんにちは。ドイツは少しずつ暖かくなり、日照時間も長くなってきました。
 今年は2月の時点からかなり花粉症に悩まされております。日本にいる時も花粉症はありましたが、ドイツでは日本より早い時期から花粉症の季節がスタートしている気がします。私の主なアレルギー症状は、くしゃみ (Niesen)、鼻水(Nasenschleim)がメインです。特に鼻詰まりが酷く夜もなかなか眠れないことが多いです。ドイツに来て1年目の時はあまり花粉症が気にならなかったのですが、2年目はかなり症状が酷い気がします。調べてみると、ドイツに来て2~3年経過して、突然花粉症に悩まされる方が多いそうです。この時期の花粉症を調べると、ヘーゼルナッツの木として知られるハシバミ属のヘーゼル(Hasel)の花粉症がメインです。ピークは2月中旬~3月初旬で、現在がまさにピーク 時となっています。3月からはブナ科のハンノキ属(Erle)、3月下旬~5月はシラカバ(Birke) の花粉が猛威を振るいます。4月は市街地、郊外を問わず多くの花粉が飛散し、さらにトリネコ (Esche)、ポプラ(Pappel )、ニレ(Ulme)、ヤナギ(Weide)などの花粉が飛び交います。 5~8月初旬にかけてはイネ科植物の花粉が主役です。代表はカモガヤ(単にGräserと呼ばれることも)、イネ科植物は違う種類でも花粉の共通抗原性が高く「イネ科花粉症」と総称されています。目鼻に加え、皮ふのかゆみなど全身症状が出やすいことが特徴的です。 夏から秋の花粉症に関しては、キク科のブタクサ(Beifuß)、アンボロシア(Ambrosia)も7月下旬~8月にかけて、時には10月末頃まで飛び交います。ちなみにドイツにはスギやヒノキによる花粉はありません。 現在の対策としては、点鼻薬と鼻うがいをしています。点鼻薬に関しては日本の時から実施していましたが、鼻うがいに関しては、ドイツに来てから実施し始めました。効果の方ですが結構いい感じです。皆様もこの時期は花粉症状に悩まされる方が多いと思いますが、花粉対策をしっかりとして乗り越えましょう。
 
 さて今回は、フランクフルト在住の三宅さんに、日本からドイツの理学療法士の免許書き換えについて、色々とリアルな情報を頂いたので、そのことについてお話ししたいと思います。また、三宅さんの経歴についてもお話ししていきます。 三宅さんの理学療法士の経歴としては、以下の通りです。

・亜急性期総合病院リハビリテーション科で5年間勤務
・その後現職制度を利用して青年海外協力隊(パナマ)に2年間参加
・同病院に復帰、半年後台湾に1年単独留学、足底反射療法、民族療法を資格取得
・日本に帰国後1年弱、県の身体障害者リハビリテーション施設で臨時勤務
・結婚出産後、5年間夫の転勤で海外(韓国、アラブ首長国連邦、英国)に滞在(家事・育児に専念)
・その後2018年にドイツに移住、去年より仕事復帰のためドイツ免許証申請、今年1月よりPhysiotherapie und training AmiluにてPraktikum(研修) 開始し、現在に至る。

 三宅さんは日本だけでなく海外での経験も豊富で、色々なことにチャレンジされており、人間性もとても素晴らしい方です。現在は私と同様にフランクフルトで開催している、石川先生のオステオパシーの勉強会にも参加しています。
 はじめに、パナマでの理学療法士時代についてお話しいただいたのでまとめました。

JICA(青年海外協力隊)として2005年から2年間パナマ共和国国立リハビリテーション施設へ派遣
-パナマ国内で唯一のリハビリテーション施設であり、理学療法全般の技術援助の要請があった。
-派遣前に訓練所にて言語と派遣国事情などを学ぶ3ヶ月の訓練があったが、現地に着いたらほぼスペイン語は速くて分からない。(海外では良くあることです)
-湿度90%を超える亜熱帯気候に加え、室内は強烈なクーラーという気温差。またホームステイ先は水シャワーのみで生活自体に慣れるのに大変だった。
-気候が暑いため、朝の7時から午後3時勤務。出勤はまず時間通りに来る同僚はいない。患者さんも連絡なく来なかったり、バスの遅延などで1~2時間遅れはざらで、退勤1時間前になると片付け始め、3時を待たずに帰ってしまうという、ルーズでゆっくりとしたパナマ時間に最初は戸惑った。
-小児治療がメインであったが、日本ではみられない症例が多く、試行錯誤した。
-医療水準が低いため、出産時の医療事故による後遺症が多く、稀少な神経性脳疾患、腕神経叢引き抜き、水頭症、アテトーゼ型脳性麻痺などが多くみられた。
-栄養失調で歩行困難になった小児患者を歩行可能までフォローしたが、援助がなくなり、また最初の状態に戻ってしまったのは、背景にある貧困問題の大きさを痛感した。
-貧困問題もあるため、JICAでは地域包括リハビリテーションを推進しており、栄養士、地域療育施設における療育者との連携ワークを行った。
-パナマの首都は高層ビルが並ぶ都会であるが、バスで30分も行けば田舎で、バスが通る道以外は舗装されておらず、山道を1時間歩いて視察に行った。
-子供をおぶって山道を歩き、理学療法を受けに療養施設まで行くことができない現実から、あばら家で、木で作ったベッドの上に放置されている(マットレスもない)四肢拘縮してしまった子供達を見て何かできないかと強く思ったが、ポジショニングをするタオルすらなかった。
-地域は理学療法室も質素で器具もなく、物に頼って治療していた自分を痛感し、木やリサイクルで補助器具を作ってみる。
-理学療法士は資格があり、患者さんより圧倒的に立場が強く、命令口調であったため、現地理学療法士への啓蒙
-伝統的な痛ければ治るという強制的なストレッチや、ボイタ法のように嫌がる子供を無理矢理動かせたり、縛り付けのような姿勢をとらせるといった治療も多く、日本の技術の紹介をした。
-理学療法士として言葉の壁もあったが、三宅さんの治療で子供が泣かなかったため、信頼してくれる患者さんもおり、技術の大切さを痛感し、子供達の笑顔に救われた 。
-JICAを通じて言葉では表現しきれないほど、人生で貴重な体験をした。援助という形であったが、現地の同僚、患者さんに私が支えられて、一緒に活動を行うという素晴らしい経験であっ た。私に関わってくれたパナマ人に感謝の気持ちしかない。

 上記について三宅さんはお話ししてくださいました。聞いていて、やはり日本はとても恵まれているなと思いました。 日本での技術や思いやりをパナマの人々に提供していた三宅さんは、何より行動力と人間力があり、素晴らしい方だなと感じました。
 続いて現在のドイツでの活動についてお話しいただき、まとめました。

-Praktikumをするきっかけとしては、免許の書き換えがなかなか進まず、ネットでドイツでの具体的な理学療法士の情報を探していたら、石川先生のPraxis(診療所)を見つけ尋ねてみました。
-先生が仰るには、書き換えにはドイツでの経験が必要だということで、プライベートで理学療法を定期的にさせてもらっているドイツ人の方が知っているPraxisを教えてくださり、メールを送ったところで快く引き受けてくださいました。
 -驚いたのが、メールを送った後、すぐに返信が来てズームで面接となりましたが、詳しい経歴は聞かれず(メールで簡単に説明はしていましたが)年齢といつ日本で免許を取ったか、と聞かれただけでした。
-その後、日程を改めPraxisのへ再度Praktikumの詳細、見学に行きましたが、好きな時に好きな時間だけ来ても良いと言うカジュアルなものでした。 Praktikumの内容としてはまだドイツの免許が発行されていないので、主に理学療法士の治療の 見学をしています。
 -私の行っているPraxisは整形外科がメインですが、セラピーに加えてKrankengymnastik(リハ ビリ体操)、最新機器が揃ったジムもあるリハビリ施設のような感じで、理学療法士の他に運動指導を行うトレーナーもいます。
-理学療法手技としては、日本と似ていますが、関節に対するものより、筋膜リリースやリンパド レナージュ、筋力強化訓練、物理療法が多い気がします。
-治療時間は基本的20分ですが、プライベート保険で10分追加30分される方や krankengymnastikとあわせて1時間されるかたなど、処方により様々ですが、日本の病院で働いていたときより、ゆったりしていて、少し安心しています。
-ドイツ特有だなと思うのが、犬を連れてきて、横でセラピーできる犬専用の部屋があったり、理 学療法器具はさすがに充実している感じはあります。

 最後に現在日本からドイツの理学療法士の免許の書き換え申請中の三宅さんが用意したものを紹介します。

【必要書類】
・ドイツ語B2レベルの語学証明書
・大学・もしくは専門学校の卒業証明書 ・学校での履修総時間を証明するもの(成績証明書)
・労働証明書
・出生証明書
・身分証明書

 ドイツの履修総時間は4500時間で、こちらは全て時間換算だそうです。日本は単位制なのでそのまま成績書を出したら、どこで調べたのか分かりませんが、勝手に三宅さんの専門学校の履修総時間を適当に計算されており、なんと1340時間だったそうです。そんなわけがないと思い、三宅さんは学校に確認したところ、やはり3045時間で、今もう一度書類を取り直し、翻訳後異議を立てる最中です。今後は履修時間が足りてない分、Ausbildungを行い、テストを受けることになるそうです。本当に先が長いと言っていました。今後ドイツでの留学を考えている人は、まずは語学レベルをある程度クリ アにしてから来ることをお勧めします。









写真はドイツのPraktikumの写真


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