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No.66「尺骨肘頭骨折は肘への過度な負担が主な原因」

2009/03/10

尺骨肘頭骨折



尺骨は肘から手首にかけて小指側を通っている長い骨です。この骨は肘の部分が太く、手首にかけてだんだんと細く作られています。今回は尺骨の肘頭部分に起こる骨折について紹介します。

主に野球やアメリカンフットボール、またはテニスといったスポーツに多く見られる尺骨肘頭骨折は、上腕三頭筋が収縮して肘に過度な負担をかけることにより発症します。投球動作やラケットスイングの動作などを繰り返すことにより、フォロースルー時の伸展で肘頭に牽引力が加わり、疲労やストレスが溜まることで肘に疼痛が生じます。痛みを感じながらも運動を続けることで、疲労骨折を起こすことがあります。

また、疲労骨折だけでなく、急激に負荷をかけることで瞬間的に骨折するケースもあります。筋肉がある人ほど負荷をかけた際の衝撃が大きく、槍投げや円盤投げなど上腕筋の力を思い切り使うスポーツでは、投球動作の瞬間に筋肉が急激に引っ張られ骨折することがあるのです。

これらのスポーツは自らの力のみの要因で発症しますが、柔道ではそれに加え外力も主な要因となります。相手を担ぎ上げたり投げ技を仕掛けたりした際、相手が踏ん張ろうとする外力が働きます。外力に対しさらに自らの力が加わることで、骨折することもあります。

症状としては、肘関節の伸展力の低下、圧痛、腫れなどがあります。これらの症状を感じ取り骨折を早期に発見し、骨折部分を固定して安静にしていれば早ければ1ヵ月以内の復帰も考えられます。

ただし、痛みを我慢しながら競技を続けると神経麻痺を起こしてしまうこともあります。肘頭には尺骨神経の通り道があるのですが、骨折に気付かないうちに骨がずれてついてしまうと、それが神経の障害となり、圧迫を受けて痺れを起こします。例えば、投手が小指と薬指が徐々に痺れて握力がなくなり、ボールがすっぽ抜けることがあるのもこういったのが関係していることがあるのです。稀なケースではありますが、神経麻痺になると治療法は手術に限られてしまいます。本人はもちろん、指導者の方は競技者の異変を察知した際には直ちに競技を中断させ、医師に診断してもらうように促すことが重要です。

少しでも早い期間で競技に復帰するためにも、早期発見と早期安静を心がけましょう。専門医ではまずレントゲンを撮りますが、疲労骨折が進行中の段階では骨折の状態を正確には把握しづらいため、骨折していないと誤って解釈してしまうこともあります。それを防ぐためにも、レントゲンだけでなく、より正確に身体の状態を把握することができるCTやMRIを必ず受けて検査しましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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