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【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol.47 日本代表を目指して、オランダへ

2026/08/26


今回は、障害馬術の世界で日本代表を目指し、日本からオランダへ拠点を移して活動している女性ライダー、内藤馨子選手について書きたいと思います。



現在、私は内藤選手のトレーニングと施術のサポートをさせてもらっています。障害馬術という競技は、馬に乗って障害物を飛ぶだけではなく、馬と人間が一つのチームとなり、お互いの動きを感じながら、瞬間的に細かな調整を行っていく競技です。そのため、同じ障害馬術の選手であっても、身体の使い方や馬への指示の出し方、姿勢、力の入れ方、呼吸の使い方などは本当に人それぞれです。選手によって乗り方が全く違うのであれば、当然、必要になるトレーニングや施術のアプローチも変わってきます。これは私が障害馬術の選手をサポートする中で、特に強く感じていることの一つです。



内藤馨子選手は、現在オランダを拠点に活動し、日本代表を目指してトレーニングを続けています。海外を拠点にして日本代表を目指すということは、競技だけではなく、生活環境や言語、文化、馬との生活、トレーニング環境、指導方法など、さまざまな部分で適応していかなければなりません。それでも自分自身の目標のために日本を離れ、競技レベルの高いヨーロッパへ拠点を移して挑戦する。その決断そのものに、選手としての覚悟を感じます。



現在、女性選手として日本代表に継続的に定着している選手はいない状況です。だからこそ、内藤選手がこれからどのように競技力を高め、日本代表という目標に近づいていくのか、私自身もサポートする立場としてとても楽しみにしています。



内藤選手の話を聞いていて、個人的にとても興味深かったのが、以前サポートしていた大久保渓選手との関係です。内藤選手と大久保選手は同世代で、二人とも小さい頃から一緒に競技を続け、戦ってきたそうです。同じ世代で、同じ競技に取り組み、幼い頃から互いを知っている二人が、それぞれ違った道を歩みながら日本代表という同じ大きな目標を目指していることは、とても興味深いことだと思います。



実際に二人を見ていると、同じ障害馬術の選手であっても、身体の使い方や馬との関係性が全く違います。ここには、トレーニングをする上で非常に大切なポイントがあります。それは、障害馬術選手だからといって、全員に同じトレーニングをすればいいわけではないということです。筋力の強さ、関節の可動性、姿勢、呼吸、体幹の安定性、左右差、身体の連動性など、さまざまな要素を見ながら、その選手に合わせて考える必要があります。



内藤選手は、どちらかというと力強さで馬をコントロールするタイプではありません。むしろ、身体の余計な力を抜き、脱力した状態を作りながら馬をコントロールしていくタイプです。ただ、脱力しているからといって、身体の安定性が必要ないわけではありません。むしろ、身体の力を抜いた状態の中で、必要な部分はしっかりと安定していなければなりません。



この「力を抜くこと」と「安定させること」の両立が、内藤選手にとって非常に重要だと考えています。現在のトレーニングでは、特に体幹の安定性と背骨のしなやかさを重要なテーマにしています。馬に乗っているとき、上半身が安定していなければ、馬に対する細かな指示が正確に伝わりません。しかし、安定させようとして身体を固めすぎてしまうと、今度は馬の動きについていけなくなります。安定しているけれど、固まっていない。この状態を作ることが重要です。



そのために、現在は呼吸、腹圧のコントロール、頭部の位置、身体のエロンゲーションなどを一つひとつ確認しながらトレーニングしています。そして、それらを安定させた状態で、四肢を自由に動かすことができるのかというところも大きなテーマにしています。



身体の中心が安定していない状態で手足だけを動かしても、動作の精度は上がりません。逆に、身体の中心が安定し、背骨がしなやかに動くことで、四肢がより自由に動かせるようになります。馬上では、この身体のコントロールが非常に細かな部分につながっていきます。



特に呼吸と腹圧については、かなり重要だと考えています。腹圧というと、お腹に力を入れるというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、単純に腹筋を固めればいいわけではありません。呼吸を続けながら、必要なタイミングで身体の中心を安定させる。そして、その安定性を保ちながら、肩や腕、股関節、脚などを自由に動かす。これができることが重要です。



馬に乗っているときは、身体全体が常に動いています。馬の動きを受けながら、自分自身の身体も調整し続けなければなりません。その中で呼吸が止まってしまったり、身体のどこかを過剰に固めてしまったりすると、繊細な動きが失われてしまいます。だからこそ、トレーニングではどれだけ力を入れるかだけではなく、どれだけ必要のない力を抜けるかという部分も大切にしています。また、頭部の位置も重要なポイントです。頭は身体の中でも重い部分なので、その位置が少し変わるだけでも背骨や体幹の使い方は変化します。頭を前に出した状態と、身体の中心に頭が乗っている状態では、同じ動作をしていても身体にかかる負担やバランスは変わります。そのため、頭部の位置を整えながら、背骨を長く使うエロンゲーションを意識する。その状態で呼吸を続け、腹圧をコントロールし、さらに手足を動かしていく。一見するとシンプルな動作ですが、実際にやってみると非常に難しいものです。



現在は週1回のトレーニングをベースに、このような身体の状態を一つずつ確認しながら取り組んでいます。すぐに結果が出るものではありませんが、こうした細かな積み重ねが、最終的には競技の中で大きな違いになると思っています。



そして、内藤選手の話を聞いていて改めて感じたのが、国によっても馬術の指導や考え方には違いがあるということです。日本で受けてきた指導と、オランダで受ける指導。同じ障害馬術でも、考え方やアプローチが違う部分があります。



これは、どちらが正しい、どちらが間違っているという話ではありません。それぞれの国や地域で、長い時間をかけて培われてきた文化や経験があります。海外へ行くということは、単純に海外の技術を学ぶということだけではなく、自分がこれまで身につけてきたものを一度客観的に見直す機会にもなるのだと思います。



内藤選手自身も、オランダという新しい環境の中でさまざまなことを吸収しながら、自分自身の乗り方をさらに磨いているところなのだと思います。私自身もサポートする中で、日本での考え方だけに固執するのではなく、選手が海外でどのような刺激を受け、何を感じ、どう変化しているのかを見ながら、トレーニングや施術の方法を考えていきたいと思っています。



そして今回、もう一つ嬉しいニュースがありました。以前までサポートさせてもらっていた障害馬術の大久保渓選手が、少し前に行われたアジア選手権で日本代表に選出されたという報告です。



大久保選手とは、約2年半にわたってサポートをさせてもらいました。2年半という時間の中では、もちろん良いことばかりではありません。思うように身体が動かない時期もあれば、競技結果がついてこない時期もあります。選手として悩むこともあったと思います。それでも、トレーニングを続けながら、一つひとつ課題に向き合ってきました。



だからこそ、今回「日本代表に選出された」という報告を聞いたときは、本当に嬉しかったです。選手の結果だけを見れば、日本代表に選ばれたという一言で終わってしまうかもしれません。でも、その結果に至るまでには、本人にしか分からない努力や苦しみがあります。長くサポートさせてもらったからこそ、その過程を少しでも知っている。だからこそ、今回の報告は自分にとっても特別なものでした。



トレーナーや施術者として選手をサポートしていると、競技会場で結果を見るだけでは分からない部分を見ることができます。身体の状態が良くないとき、思うように動けないとき、トレーニングがうまくいかないとき。逆に、少しずつ身体が変わり、以前できなかったことができるようになったとき。そうした変化を一緒に経験できることは、この仕事の大きな魅力だと思います。

選手が結果を出したときに、自分が結果を出したという感覚ではなく、ここまで一緒にやってきた時間が少し形になった、そんな感覚に近いのかもしれません。

大久保選手には、今回の日本代表選出を一つの大きなステップとして、これからも日本代表に定着できるよう頑張ってほしいと思っています。



今回、内藤選手と大久保選手という、同世代で幼い頃から障害馬術を続けてきた二人について書きました。一人は日本を離れ、オランダを拠点に日本代表を目指している。もう一人は、実際に日本代表に選出されるところまでたどり着いた。歩んでいる道は違いますが、二人とも長い時間をかけて競技を続けてきた選手です。

そして、二人を見ていると改めて感じることがあります。それは、同じ競技でも、選手によって身体の使い方も、馬との向き合い方も、必要なサポートも全く違うということです。



だからこそ、私は一人ひとりの選手をしっかり見て、その人にとって何が必要なのかを考えることを大切にしています。

内藤選手には、まずオランダという新しい環境の中で、自分自身の乗り方をさらに確立していってほしいと思います。そして、その先にある日本代表という目標に向かって、一歩ずつ進んでいってほしい。現在は週1回のトレーニングを中心に、呼吸、腹圧、頭部の位置、エロンゲーション、体幹の安定性、背骨のしなやかさなど、細かな部分を積み重ねています。

そして大久保選手には、今回の日本代表選出を新たなスタートとして、さらに上を目指してほしいと思います。これから二人がそれぞれの場所でどのように成長し、どんな景色を見せてくれるのか。サポートする側として、そして一人の競技を応援する人間として、これからも楽しみにしています。日本からオランダへ。そして、日本代表という大きな目標へ。内藤馨子選手のこれからの挑戦を、引き続きサポートしていきたいと思います。そして、大久保渓選手にも、これから日本代表としてさらに活躍してくれることを期待しています。

選手が違えば、身体も違う。乗り方も違う。だから、サポートの形も違う。

それぞれの選手に合わせたアプローチを大切にしながら、これからも競技者の身体と向き合っていきたいと思います。







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