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スタッフブログ

【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol38.【ドイツ挑戦】22歳・宮田理帆 —— 「やらない後悔は一生」壁に挑み続ける、若き日本人ハンドボール選手のリアル

2025/11/26


皆さんこんにちは。
デュッセルドルフも一気に冬の寒さが深まってきました。
街を歩くとクリスマスマーケットの準備が進み、広場には大きなツリーや屋台が並び始めています。
この時期になるとドイツらしい暖かい雰囲気に包まれ、同時に「今年もあと少しか…」と、時間の流れの速さを実感します。

さて今回は、現在私がサポートさせていただいている ハンドボール選手・宮田理帆さん(22歳) について書きたいと思います。
彼女がドイツに来てからの挑戦、葛藤、成長、そしてこれからの未来に向けた思い。
そのすべてが、本当に胸を打つものばかりです。

私自身、彼女のサポートをさせていただく中で、日々大きな刺激をもらっています。
今回のブログでは、宮田さんがこれまでの人生でどのようにハンドボールに向き合い、どんな思いでドイツに挑戦し、どんな壁にぶつかり、どんな成長を遂げているのか。
彼女からいただいた内容をすべて使い、丁寧にまとめました。



○ 中学時代に偶然出会ったハンドボール

宮田さんがハンドボールに出会ったのは、中学生の頃。
家で何気なく流れていたハンドボールの映像を見て「やってみたい」と直感したそうです。
スポーツとの出会いは本当に些細なきっかけで、それが人生を変えることがあります。

高校は愛知県立安城高等学校。
彼女はそこで本格的にハンドボールに打ち込み始めます。

ただ、大学進学後の環境は決して恵まれていたわけではありません。
岐阜大学のハンドボール部は、部員が少なく、活動も週3回ほど。
彼女自身「もっと上を目指したい」という強い思いを持っていたため、環境に物足りなさを感じていたそうです。

そこで宮田さんは、自分から動きました。
岐阜県内の実業団に、自ら連絡をし、練習参加を頼み込んだのです。

最初は当然のように断られました。
それでも諦めず、何度も何度も連絡をし続け、なんと 20回以上断られた そうです。

普通ならそこで心が折れてしまうはずですが、彼女は諦めませんでした。

そして…ついに練習参加の許可を得ます。
念願の実業団のコートに立った時、
「自分の求めていた環境はここだ」
と強く感じたそうです。

約1年間練習生として努力を続けましたが、残念ながら正式契約には至りませんでした。

それでも、この時の経験が彼女の中に強い火をつけます。



○ 「悔しいまま終われない」── ドイツ挑戦を決めた理由

日本で契約に届かなかった悔しさは、簡単には消えませんでした。
「このまま競技人生を終えたくない」
「もっと自分を試したい」
そんな思いが、次の大きな決断へとつながります。

それが、
ヨーロッパ・ドイツへの挑戦。

彼女は憧れでもあったドイツで、自分がどこまで通用するのかを確かめたいと強く思ったそうです。

周りの反対や不安もあったはずです。
それでも一歩踏み出す決断をしたのは、彼女に “もう一度自分を信じてチャレンジしたい” という強い思いがあったからです。



○ 渡独後、佐々木春乃選手との出会いが大きな支えに

ドイツに渡って間もない2024年7月。
宮田さんは、
Frisch Auf Göppingen(フリッシュ・アウフ・ゲッピンゲン)でプレーする女子日本代表・佐々木春乃選手
と実際に会う機会がありました。

佐々木選手は、以前私が 個人的にコンディショニングとパーソナルトレーニングをサポートさせていただいていた選手 でもあります。

海外で長年戦ってきた選手の考え方、姿勢、プロとしての“当たり前”。
どれもリアルで、重みのある話だったようです。

佐々木選手が話してくれた内容は、
・海外でのメンタル
・人間関係の捉え方
・プロとして必要な習慣
・孤独の乗り越え方
・練習や試合での姿勢

など、本当に多岐にわたり、宮田さんにとって大きな支えになりました。

「自分もこうなりたい」
そう心から思ったと話してくれました。



○ 初めてのトライアウトは孤独との戦い

ドイツ到着後すぐに受けたのが、
Bergischer HC 1軍(2部)・2軍(Oberliga)
でのトライアウト練習でした。

しかし、この頃はまだドイツ語がまったく話せない状態。

・誰とも話せない
・名前を呼ばれない
・必要な指示も理解できない
・会話に入れない

そんな孤独な環境での練習は、精神的にものすごくきつかったそうです。

練習でもなかなか相手にされず、存在感を出すことができなかったと話してくれました。

結果は契約ならず。

ただし、この経験が
「もっと強くなりたい」
という気持ちを強くするきっかけになったそうです。



○ ブンデス2部・ブレーメンの練習は衝撃の連続

シーズンオフを利用し、ブンデスリーガ2部のブレーメンのチームにも練習参加しました。

ここで彼女は “レベルの違い” を痛感します。

・スピードが段違い
・体格差
・フィジカルの強さ
・判断スピード
・プレッシャーの強度

どれも日本とは比べものにならないほどでした。

さらに、練習に参加するには片道4〜5時間の電車移動を2週間も続けたそうです。
練習が終わって帰る頃には深夜3時、4時になることもあったそうです。

それでも、
「きつさより、挑戦できている喜びの方が大きかった」
と彼女は言います。

この言葉に、彼女の覚悟と強さを感じました。



○ 日本とドイツのハンドボールの違い

宮田さんから聞いた日本とドイツの違いをまとめると、非常に興味深いものがあります。

▶ プレースタイル

日本:戦術・連携中心
ドイツ:個の強さ(1対1・フィジカル・コア)

日本ではファールになるプレーも、ドイツでは続行することが多いそうです。

▶ 練習環境

日本:週6〜7
ドイツ:週3〜4(その分強度が高い)

さらに、
GKコーチが専属でいるなど、専門性の高い指導が特徴。

▶ チーム文化

・幅広い年代の選手が一緒にプレーする
・年齢関係なく意見を言い合う
・練習後にビールを飲んでコミュニケーションを取る
・“楽しみながら強くなる文化” が根付いている

ドイツならではの空気を感じたと言います。



○ 今感じている一番大きな壁は「言語」

半年以上ドイツで生活し、最も強く感じているのが 言語の壁 だそうです。

話せないことで、
・戦術理解が遅れる
・コミュニケーションが取れない
・監督の意図を理解できない
・存在感を出しにくい
・自信が持てなくなる

実力とは別のところで苦しむ部分が多いと言っていました。

それでも彼女は語学学習に本気で取り組み、少しずつ伝えられる言葉が増えてきています。



○ 宮田さんの強みと、これから必要な課題

宮田さんの強みは、

・スピード
・切り替えの速さ
・素直さ
・吸収力の高さ

一方で課題としては、

・1対1の強さ
・フィジカル
・コアの安定性

が挙げられます。

ここは、ドイツで戦う上で欠かせないポイントです。



○ 現在私がサポートしている内容

私が現在サポートしているのは、

・身体のケア
・フィジカル強化
・コアトレーニング
・爆発的な動きのためのパワートレーニング
・基礎動作の徹底
・怪我予防

など多方面になります。

宮田さんは本当に素直で、こちらが伝えたことをすぐに実践しようと努力してくれます。
その吸収力と成長スピードは本当に素晴らしく、毎回のセッションが楽しみです。

“プロを目指す覚悟がある選手” の背中を押せるこの時間は、私にとっても大きなやりがいになっています。



○ 今後の目標

宮田さんの1番の目標は、
「ドイツのプロリーグ(2部)でプレーすること」 です。

そのために必要なことは、
・フィジカル
・技術
・言語
・メンタル
この4つの柱を徹底的に伸ばしていくこと。

彼女の姿勢を見ていると、その目標は決して夢物語ではありません。
むしろ「このまま努力を積み重ねればきっと届く」と確信しています。



○ 海外を目指す日本人アスリートへ

最後に、宮田さんが大切にしている言葉を紹介いたします。

「やらない後悔は一生。やった後悔は工夫すれば後悔ではなくなる。」

この言葉は、彼女の生き方そのものを表していると感じます。この言葉は彼女が決断に迷った時に大切にしていることだと言います。実績がなくても挑戦することは可能。そして道は自分で切り拓けば良い。
挑戦する人の背中を強く押してくれる、温かく、力強い言葉です。



○ 最後に

挑戦する選手と向き合うと、本当に多くのものを与えてもらいます。
努力する姿、壁にぶつかりながらも立ち上がる姿、それでも前を向き続ける姿。

宮田理帆さんの挑戦は、
“環境がなければ、自分で扉を叩き続ければいい”
という強いメッセージを私たちに届けてくれます。

そして何より、
「もちろん楽しいばかりではないけど、挑戦するって、こんなにも楽しい」
そんな前向きで美しいエネルギーを感じさせてくれます。


宮田理帆さんのこれからの未来が、とても楽しみです。
そして私も、施術とトレーニングを通して、全力でサポートしていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
また次回の更新でお会いしましょう。











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