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スポーツドクターコラム

No.77「接触プレーで起こる首の障害」

2010/02/10

首の障害



コンタクトスポーツでは、ときに交通事故のような衝撃を首に受けることがあります。不意に衝撃を受け頚部が前後屈動作や回旋動作を強いられて引き起こされる障害をむち打ちと言います。衝撃により頚部の構成体がどの程度壊されたかによって予後が運命づけられると言えます。また、首の骨は年齢を重ねると変形していくため、年齢も予後に大きく影響する要素。そのため中高年になってからのスポーツは、接触プレーをできるだけ避け、大事に至らないよう注意しましょう。

症状としては、首の痛み、頭痛、肩こり、吐き気、めまい、筋力低下などさまざま。大半は軽症例で局所の症状にとどまるものの、ときとして交感神経や椎骨動脈の異常な緊張により自律神経失調症に苦しむ場合もあります。ひどいときには筋肉や靭帯ではなく骨や神経までが傷つき頸椎損傷になることや、椎間板が飛び出て神経を圧迫してヘルニアとなることもあります。

急性期は頚部の安静を保ち、装具療法として頚椎カラーを着用させます。痛みには、非ステロイド系抗炎症剤や筋弛緩剤を処方。急性期を過ぎると、温熱療法や電気刺激療法を施し、ストレッチングや筋力強化訓練などを指導します。痛みが強い場合は痛みのポイントに神経ブロック療法をすることもあります。心因的要素が関与する症例ではカウンセリングも必要です。

それでも吐き気などの症状が残るときには、脳脊髄液減少症を引き起こしている可能性もあります。脳から神経はひとつのフローで覆われ髄液に浮かんでいるような状態になっていますが、むち打ちが原因で髄膜が破れると髄液が漏れてしまいます。そうなると、頭痛がしたり吐き気がしたりという症状が出ます。状態が改善されないときには、MRIやシンチグラフィーなどで確認が必要です。

また、タックルなど激しいコンタクトプレーではバナー症候群という障害も見られます。頚から肩へと走る神経の束(腕神経叢)が急激に引き伸ばされて引き起こされます。首から手にかかる神経が根本で抑えられるため、その経路に沿って痛みを生じます。症状としては背中と肩から手にかけて火がついたような痛みと痺れ、脱力感、皮膚感覚の低下。症状は一時的なことが多いので安静にしていれば数分から数時間で治まります。しかし、同じような衝撃を繰り返すと神経症状が更に悪化し、痛みが治まるまで数日もしくは数ヵ月かかり、慢性化すると血行不良やむくみ、握力の低下を引き起こします。最悪のケースは動きに制限がかかり歯磨きや食事などの日常生活に支障を来すこともあります。症状に回復が見られないときは、神経損傷を起こしていることも考えられるので、早期に医師に相談し治療を受けましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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