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スポーツドクターコラム

No.17「野球選手に多い肩の障害ルーズショルダー」

2005/02/10

ルーズショルダー



野球選手に多いと言われる肩関節の障害の一つに、ルーズショルダー(動揺肩)があります。これは肩関節が多方向の不安定性を生じて、異常に緩くなってしまう状態のことを言います。この障害では投球動作中にバランスを崩して肩関節の部品を傷めるなど、大きな外力がかかっていない場合でも微小な外傷によって、疼きや痛み、不快感、脱力感を訴えるようになります。スポーツ選手以外でも、一般的には生まれつき靱帯の緩い人に起こりやすく、遺伝性もあると言われています。  

 ルーズショルダーで一番多い病態の一つが、腱板機能が低下している場合です。腱板は肩甲骨と上腕をつなぐ筋のことを言いますが、この肩関節に一番近い筋肉が衰えているため、肩関節が緩くなってしまうのです。また、肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の間にある関節)機能が低下している場合も考えられます。この関節は、肩関節が十分な機能を発揮するための土台となる部分です。この土台が安定していないため、肩関節そのものに異常はなくても不安定な状態になってしまうことがあります。  

 このような症状になってしまった場合でも、必ず手術を必要とするわけではありません。運動療法を中心とした保存療法でも十分に回復するケースもあります。まずは肩関節に精通した専門家に相談し、きちんとした管理下で運動療法を試みるのがよいでしょう。

 運動療法では、まずインナーマッスルを鍛える必要があります。筋肉にはインナーマッスル(関節の近くにある筋肉)とアウターマッスル(関節の外側についている筋肉)があり、いわゆる筋トレでアウターマッスルを鍛える人は多いのですが、インナーマッスルが弱い人は非常に多いのです。ルーズショルダーの人はもともとインナーマッスルの弱い人が多いため、外側の筋肉を鍛えると、てこの原理で支点となる肩関節への負担が大きくなり、余計症状を悪化させてしまいます。これはルーズショルダーの特徴と言えるでしょう。  

 しかし、運動療法に反応しなかったり、回復がみられなかった場合は手術を必要とすることもあります。手術の方法として、thermal capsular shrinkage(TCS、鏡視下関節包熱収縮術)といって熱により緩んだ関節を収縮させる方法などがあります。ただしこの手法での効果は一時的ですから、熱である程度収縮させた後はやはり運動療法が必要となります。その他では、緩んだ部分を切断し、縮める手法をとるケースも比較的多くみられます。





スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。


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