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スポーツドクターコラム
No.74「扁平足が及ぼす競技力への影響」
2009/11/10
扁平足
足裏(土踏まず)は骨の構造によって縦と横のアーチが作られており、歩行や直立の際のバランスを取ってバネとなり衝撃を緩和するクッションの役割を果たします。しかし、遺伝的要因でアーチの形成が阻害されたり、骨格が変形してアーチがなくなる障害を扁平足と言います。
人は誰もが8歳程度まで土踏まずがなく、乳幼児から少年期にかけて足底筋(足の裏にある筋肉)が発達しアーチが形成されていきます。そのため、成長期に裸足で歩かせたり、運動させたりすることで発達を促します。近年、園内では裸足での行動を推進する幼稚園が増えているのもそのため。常に靴を履いた状態では足底筋の成長が妨げられるので、成長期はなるべく裸足に近い状態を保ち、筋肉を鍛えることが求められます。
競技者には、トレーニングによりふくらはぎの筋肉が非常に発達した選手が多くいます。しかし、筋肉の柔軟性が低いと踵の骨を持ち上げようとする力が働き、足底筋が引っ張られアーチを伸ばしてしまい土踏まずが平らになって扁平足を引き起こします。 土踏まずが形成されている人が歩行するときは、踵から着地して足裏の外側から母指にかけて回りながら接地し最後は母指で地面を蹴ります。地面から離れた後は下肢が内回転して再び踵から着地するという一連の動きになります。足裏が地面に接地する際に、足裏にできたアーチがクッションの役割を果たすことでスムーズかつ効率的な力の伝達ができているのです。
しかし扁平足になるとクッションがなくなるため、踵で着地した後に落ち込みがひどくなり足裏全体が地面に接地してしまうため、下肢の内側への捻りも大きくなってしまいます。また、バネの役割がなくなることで地面を蹴る強度も弱くなり、力の伝達が非効率で他の部位が余分なエネルギーを消費しなければいけなくなります。無駄な動きが生じると筋疲労に繋がり、故障を招く要因にもなりかねません。飛んだり走ったりするような、足の骨格で衝撃を吸収する必要がある競技が苦手となる可能性が高いと言えるでしょう。扁平足は競技力低下だけでなく故障にも繋がるので、予防と改善が大事になってきます。
方法としては、テーピングでの矯正や足趾で物を掴むトレーニングでの筋力強化などが挙げられます。しかし、それ以上に個々の特性に合ったインソール(靴の中敷)を使用することがより効果的。同型の多い既製品ではなく、さまざまな角度からの動作解析により自分のアーチの形や動きに合ったものが有効で、障害予防にも技術力の向上にも繋がります。ただその場合は、必ず実際にインソールをつけて歩いたり走ったりして改善されているかチェックしましょう。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。