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スポーツドクターコラム

第二期 VOL.10「完治が難しい黄色靭帯骨化症」

2012/10/11

黄色靭帯骨化症

PDF版はコチラ 2026/02/10 Q&A追記

今回は非常に珍しい疾患についてお話しようと思います。黄色靭帯骨化症とは耳馴染みのない病名かもしれませんが、症状に差はあれど20歳以上の成年に見られる疾患です。今年6月、巨人に所属するの越智大祐選手が手術を受けたことで話題となりました。厚生労働省が定める特定疾患に認定されており、現在でも原因が特定されていない難病の1つです。欧米人に比べ日本人に多くみられますが、これも原因は分かっていません。 まず始めに黄色靭帯とは脊柱の背中側にあり椎弓を繋ぐ靭帯のことで、その名の通り黄色をしています。そこが骨化することで脊髄を圧迫し、下肢の痺れだけでなく、麻痺などの重い症状をきたすこともあります。胸椎の下位に発生することが多いのですが、腰椎でも発症します。また、脊髄を挟んで反対側にある後縦靭帯の骨化を併発する場合もみられます。症状が進めば歩行が困難となり、転倒などによる外傷を負うこともあるので注意が必要です。 靭帯の骨化は患部にカルシウムが付着することで起こります。骨化する箇所は部分的なものもあれば広範囲に及ぶものもありますが、小さなものであれば日常生活では気付きにくく、レントゲンやMRIで別の検査をした際に偶然見つかることもあります。治療に関しては進行が予測できないため、まずは経過観察となります。その際に脊髄の栄養剤としてビタミンB、緊張した周りの筋肉の動きを弱める筋弛緩剤を用いますが、原因が特定されていない以上、効果的な治療法とはいえません。 痺れなどの症状が強くなれば、手術により骨化した部分を取り除かなければいけません。しかし、それが根本的な完治に繋がるかといわれればそう言い切れないことも多く、神経症状が出ている場合たとえ手術を受けても圧迫されていた脊髄がもとに戻らないこともあります。 先程も述べましたが、この疾患は人によって骨化する場所、大きさ、進行具合がさまざまです。ただ、スポーツ選手については一般の人より患部に掛かるストレスも強く、また体の反応に敏感なため症状を自覚することも多いようです。 術後については、野球の投手のようにコンタクトが少なければ競技への復帰は可能でしょう。術式にもよりますが、復帰には早くても半年を要すると見込まれます。 反対にサッカーのヘディングやバレーのスパイクなど、頸椎や胸椎を反る動作が多い、またはコンタクトが多いスポーツに関しては患部に掛かる負担が大きいため復帰は難しいと言わざるを得ません。実際に手術は行ったものの、完治には至らず現役を退いた選手は多くいます。 しかし、過去にはこの症状を克服したサッカー選手がいるとの報告もあります。この選手はヘディングをした際に強い痺れを感じ検査の結果、黄色靭帯骨化症と診断を受けました。このときは部分的椎弓切除術を用い骨化し圧迫している箇所を部分的に切除しましたが、全ての選手がこれに当てはまるとは限りません。 とにかく下肢の痺れなど同じ症状が出た場合には、早めに検査を受けることをお勧めします。 スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 黄色靭帯骨化症とは、どのような病気ですか?

A. 黄色靭帯骨化症とは、脊柱の背中側にある「黄色靭帯」が骨のように硬く変化し、 脊髄を圧迫することで神経症状を引き起こす疾患です。

進行すると、下肢のしびれや脱力、歩行障害などの重い症状が現れることがあります。 比較的まれな疾患ですが、日本人に多いことが知られており、 指定難病にも含まれています。

Q2. どの年代に多くみられる病気ですか?

A. 20歳以上の成人にみられることが多く、加齢とともに発症リスクが高まる傾向があります。

ただし、発症年齢や進行の速さには個人差が大きく、若年層で見つかるケースもあります。

Q3. どのような症状が出るのですか?

A. 主な症状は以下のようなものです。

〈代表的な症状〉
・下肢のしびれや違和感
・足に力が入りにくい
・歩きにくさ、つまずきやすさ
・進行すると麻痺が出ることがある
・まれに排尿・排便の異常を伴うことがある

初期には症状が軽く、気づかれにくいことも少なくありません。

Q4. なぜ注意が必要な病気なのですか?

A. 黄色靭帯骨化症は、進行の予測が難しく、自然に治ることが期待できない疾患です。

骨化が進むと脊髄への圧迫が強くなり、神経障害が不可逆的になる可能性があります。 そのため、症状が軽いうちから慎重な経過観察が重要となります。

Q5. レントゲンやMRIで発見できますか?

A. はい、発見にはMRIやCT検査が有効です。

レントゲンでは小さな骨化が分かりにくい場合もありますが、 MRIでは脊髄への圧迫の程度を、CTでは骨化の範囲や形状を詳しく評価できます。

Q6. 症状が軽い場合は、治療せず様子を見てもよいのでしょうか?

A. 症状が軽い場合には、まず経過観察を行うことがあります。 その際、ビタミンB製剤や筋弛緩薬などを用いて神経や周囲筋の状態を整えながら、慎重に経過をみていきます。

ただし、定期的な診察と画像評価は欠かせません。

Q7. 黄色靭帯骨化症に対して、最も有効といわれている治療は何ですか?

A. 現時点で、黄色靭帯骨化症そのものを止めたり元に戻したりできる根本的な治療法は確立されていません。 そのため、症状の程度に応じた対応が治療の基本となります。

神経症状が進行し、日常生活や歩行に支障が出ている場合には、 手術によって骨化した靭帯を切除し、脊髄の圧迫を解除することが、症状改善に対して最も有効とされています。

ただし、手術を行っても脊髄が完全に回復するとは限らず、改善の程度には個人差があります。

Q8. 手術をすれば完治するのでしょうか?

A. 必ずしも完治するとは限りません。 手術によって進行を止めたり症状の改善を図ることは可能ですが、 長期間圧迫されていた脊髄が完全に元に戻らないケースもあります。

Q9. スポーツ選手は競技復帰できますか?

A. 競技復帰の可否は、発症部位・症状の程度・術式・競技特性によって異なります。

比較的コンタクトの少ない競技では復帰が可能な場合もありますが、 脊柱を大きく反らす動作や接触の多い競技では復帰が難しいケースもあります。

Q10. どのような症状があれば、早めに受診すべきですか?

A. 以下のような症状がみられる場合は、早めに整形外科専門医の診察を受けることを勧めます。

〈受診を検討したいサイン〉
・下肢のしびれが続く、または悪化している
・歩行が不安定になってきた
・足に力が入りにくい感覚がある
・転びやすくなった

早期に評価することで、重症化を防げる可能性があります。

飛翔会の整形外科クリニック


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