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スポーツドクターコラム

No.12「サッカー選手に多いスポーツヘルニア」

2004/07/10

スポーツヘルニア


グロインペイン症候群



スポーツ選手の中でも特にサッカー選手に多く発生する鼠径部(股関節の少し上の部分)周辺の痛みとして、スポーツヘルニア(=groin pain syndrome)があります。欧州では昔から認識されていた障害ですが、日本では全く別の病気である「恥骨結合炎」と診断されるなど、あまり認知されていませんでした。浦和レッズに在籍していた福田正博選手が鼠径部痛を訴え、ドイツの専門医に検査してもらった時に「groin pain syndrome」と診断されたのが日本での第1号です。   

この障害は「スポーツ版脱腸」と考える事ができます。腹横筋と鼠径靭帯の間にある腹壁の薄い部分が膨らんで突出することが俗に言う『脱腸』です(勿論腸がはみ出す事ではありません。)スポーツヘルニアの場合は本当にその腹壁が突出するのではありません。鼠径観管後壁の弱体化によって腹圧がかかった場合、鼠径管やその周囲の組織を圧迫することによって痛みが発生することを言います。特にサッカー選手にこの症状が多く見られるのは、サッカー特有の蹴る動作が大きく影響していると言われています。キック時の股関節の強い屈曲、内転、捻りが腹部に圧力を加えているのです。   

診断は超音波検査と徒手検査で行います。そしてスポーツヘルニアと診断された場合は、昔は手術を行うケースが多く見られました。ヨーロッパでは手術に踏み切って復帰した選手も多くいます。弱体化した鼠径管後壁に強固な補強を施すショルダーズ法で、早期回復も可能です。広島では川堀病院(川堀勝史先生)と私が協力して主にスポーツヘルニアの手術を行っていました。サンフレッチェの選手のみならず、高校生などのトップアスリートではない選手達のスポーツ復帰にも、寄与してきたと思います。 

しかし、今では手術をすることはほとんどありません。近年はヨーロッパでもその傾向がみられ、イタリアのセリエAやイングランドのプレミアリーグの選手達も、リハビリでの治療を積極的に行うようになりました。股関節周囲の筋力回復を促すなどのリハビリで、手術をしなくても回復することが分かってきたからです。手術後すぐに回復する選手もいますが、ほとんどの場合では復帰まである程度の時間を要します。手術をしなくても回復の兆しがみられるケースも多数ありますし、実際に2~3カ月程度のリハビリで多くの選手が復帰しています。いずれにしても、昔に比べスポーツ選手がこの障害で悩まされることは少なくなったと言えるでしょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。


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