トップページ > スタッフブログ
スタッフブログ
【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol.35 ドイツ生活で得た特別な出会い
2025/08/26
ドイツで生活を始めてから数年が経ちました。最初の頃は言葉も不自由で、買い物一つとっても戸惑うことが多く、日々の生活に慣れるだけでも大きな挑戦でした。しかし今では少しずつ環境に順応し、自分のリズムを作りながら生活できるようになっています。現在はデュッセルドルフで施術やパーソナルトレーニングを行い、月に数回はブリュッセルに出向いて日本人の小学生を中心にサッカーを指導しています。異国の地で「施術」と「スポーツ」に携わる毎日は決して楽ではありませんが、その分、多くの学びや出会いに恵まれています。
ドイツで活動していると、日本とヨーロッパの文化や考え方の違いを日々痛感します。医療やリハビリにおいて、日本では理学療法士が患者に寄り添って細かく指導することが多いのに対し、こちらでは「自分で動いて回復を促す」という自主性が強く求められます。サッカーをはじめとしたスポーツの現場でも同じで、選手自身の自己管理能力が問われる場面が多くあります。最初はその違いに戸惑いましたが、今ではむしろ「両方の良さをどう取り入れるか」が自分の課題となっています。
日々の仕事に加えて、施術の技術を高めるための学びも続けています。2か月に一度程度はフランクフルトに通い、石川先生のもとでオステオパシーを学んでいます。先生の施術を見学したり受けながら手技や身体の捉え方を学ぶ時間は、自分の感覚を磨く上で欠かせないものです。毎回新しい発見があり、それをデュッセルドルフでの施術に活かし、さらに精度を高めることができています。こうした地道な積み重ねがあるからこそ、特別な場面でも自信を持って臨めるのだと実感しています。
そんな日常の延長線上で、今回は大きな出来事がありました。サッカー日本代表の森保一監督がヨーロッパでの選手視察の合間に、私のところへ3度も施術を受けに来てくださったのです。さらに、その滞在中にはJFAスタッフの方々と共に2度、食事に招待していただきました。
森保監督とはこれまでもご縁をいただいていましたが、ヨーロッパの現地で何度も施術を行い、直接時間を共有できたことは、自分にとってかけがえのない経験です。監督は代表監督として非常に多忙なスケジュールをこなしながらも、施術の時間には落ち着いた空気をまとい、こちらの話に耳を傾けてくださいます。その姿勢からは、常に人を大切にする気持ちが伝わってきました。
施術の時間は決して長くはありませんでしたが、その一回一回に大きな緊張感と学びがありました。普段、デュッセルドルフでは一般のお客様からアスリートまで幅広く施術をしていますが、日本代表監督という立場の方を相手にすると、自然と自分の意識も研ぎ澄まされます。小さな筋肉のこわばりや疲労のサインを逃さず、どの手技を選択するのかを瞬時に判断しながら施術を組み立てていきました。
施術後に「ありがとう、すごく楽になったよ」と声をかけていただいたときには、心からの安堵と喜びを感じました。日々の努力が確かに実を結んだ瞬間であり、地道に積み重ねてきたことが報われたように思えました。
また、食事の場での交流も非常に印象深いものでした。JFAスタッフの方々と同じテーブルで、ヨーロッパで視察した選手の話や、代表チームのお話などを伺うことができたのは貴重な機会でした。もちろん話題はそれだけではなく、サッカー以外の話や冗談も交わされ、場は常に和やかで温かい雰囲気に包まれていました。森保監督はその場でも一人ひとりに気を配り、全員が会話に参加できるよう自然に場を作っておられました。その姿に「リーダーとはこうあるべき」と学ばせていただきました。
改めて振り返ると、こうした特別な時間も、普段の積み重ねの延長線上にあるのだと感じます。デュッセルドルフで一般のお客様に施術をし、ブリュッセルで子どもたちにサッカーを教え、そしてフランクフルトでオステオパシーを学び続ける。そうした一見地味で小さな日常の積み重ねが、今回のような大きな出会いに結びついたのだと思います。
私の目標は、いつか多くの日本代表選手、または海外選手を直接サポートすることです。施術やトレーニングを通じて選手のパフォーマンスを最大限に引き出せるような存在になりたい。そのために今は、目の前の仕事と学びを丁寧に積み重ねることが何より大切です。森保監督との経験は、その目標に向けて自分の進むべき道をより明確にしてくれました。
ドイツでの生活は決して容易ではありません。言語の壁や文化の違いに悩むこともあり、仕事を広げていく難しさに直面することも少なくありません。それでも、努力を続けていれば思いがけない形でチャンスや出会いが訪れる。今回の経験はそのことを力強く教えてくれました。
これからも、日常の仕事と学びを大切にしながら、一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。そしていつの日か、日本代表の選手たちを支える立場として現場に立てるよう、挑戦を続けていきます。森保監督との時間は、その夢を現実に近づける大きな力を与えてくれました。ドイツで過ごす毎日をこれからも大切にしながら、さらに前進していきたいと思います。


飛翔会の整形外科クリニック
