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【蔵本達也のドイツ社会人留学リポート】Vol.48 身体を部分ではなく、全体で見る(オステオパシー勉強会)
2026/09/24
先日、フランクフルトで石川先生によるオステオパシーの勉強会に参加しました。普段からスポーツ選手や一般の方の身体のケアやトレーニングに関わっていますが、今回の勉強会は、改めて「身体を見る」ということについて考えさせられる、とても有意義な時間になりました。身体をケアするとき、どうしても痛みのある場所や動きの悪い関節、緊張している筋肉など、目に見えやすい部分に意識が向きます。もちろん、それらを確認することは大切です。でも、身体はそれぞれのパーツが独立して存在しているわけではありません。筋肉、関節、筋膜、神経、呼吸、姿勢など、さまざまな要素がつながりながら、一つの身体をつくっています。今回の勉強会では、その「つながり」を改めて意識しながら、口腔内や頭蓋へのアプローチについて学びました。
特に今回、印象に残ったのが口腔内へのアプローチです。実は、口腔内の治療テクニックについては、以前にも石川先生に教えていただいたことがあります。今回は、以前教えていただいたテクニックをもう一度しっかりと復習しながら、さらに新しいテクニックも加えて教えていただきました。一度学んだことを、時間を置いてもう一度教えていただくことで、以前は理解しきれていなかった部分がつながったり、実際に手を動かすことで新しい発見があったりします。さらに新しいテクニックが加わったことで、以前よりも自分の中で選択肢が増え、身体の状態を見ながら、どこに、どのようにアプローチするのかという考え方も、より深くなったように感じます。正直、今回の勉強会を終えて「これはかなりパワーアップしたな」という感触がありました。知識が増えただけではなく、以前から持っていた技術をもう一度見直したことで、自分の中で技術が整理され、新しいものとつながった。この感覚は、実際の現場でとても大きいと思います。今回は口腔内から外側翼突筋、内側翼突筋などにもアプローチしました。こうした筋肉を単純に「硬いから緩める」という考え方ではなく、実際に顎を動かしたときの左右差や周囲の組織との関係を感じながら確認していきます。実際に触れてみると、普段外側から触っているだけでは分からない感覚があります。身体の中にある組織をどのように捉えるのか、どの方向に動きたがっているのか、左右でどのような違いがあるのか、そして、そこにアプローチした後に身体全体にどのような変化が出るのか。一つひとつを確認していくことが、とても勉強になりました。
今回の勉強会で大切だと感じたのは、顎を見ているけれど、顎だけを見ているわけではないということです。例えば、顎の動きに左右差があった場合、その原因が必ずしも顎周辺だけにあるとは限りません。頭部の緊張、頸部との関係、呼吸、姿勢、全身の使い方など、さまざまな要素が関係している可能性があります。だからこそ、一つの場所だけを見て判断するのではなく、「ここに変化がある。では、なぜここに変化があるのか。その変化は身体のどこにつながっているのか」と、少しずつ視野を広げていくことが重要なのだと思います。これは、私が普段選手の身体を見るときにも、とても大切にしている考え方です。
今回の勉強会では、口腔内へのアプローチだけではなく、頭蓋についても学びました。その中でも、蝶形骨と前頭骨の関係は非常に興味深いものでした。頭蓋は多くの骨が複雑な関係を持って構成されています。蝶形骨は頭蓋の中心部に位置し、眼窩や頭蓋底など、さまざまな構造と関係しています。そのため、蝶形骨を考えるときにも、蝶形骨だけを見るのではなく、周囲の骨や組織との関係を見ることが大切になります。今回は蝶形骨と前頭骨の関係に着目し、前頭部を含めたリリースを行いました。頭蓋へのアプローチは非常に繊細で、強く押して動かすというよりも、組織の状態を感じながら、その人の身体が持っている動きや反応を確認していく。その感覚を学べたことも、今回の大きな収穫でした。さらに、篩骨についても学びました。篩骨は鼻腔や眼窩などとも関係する骨で、頭蓋の中でも非常に興味深い位置にあります。普段の施術では筋肉や関節に意識が向きやすいですが、頭蓋を構成する骨と周囲の組織との関係まで考えていくと、身体を見る視点がさらに広がります。今回、蝶形骨、前頭骨、篩骨などについて学んだことで、頭部を一つの立体的な構造として捉える必要性を改めて感じました。
そして、もう一つ印象に残ったのが、視床下部について考えることでした。視床下部は自律神経系や内分泌系など、身体の恒常性を維持するための重要な働きに関わっています。身体のケアを考えるとき、筋肉の硬さや関節の可動域だけを見ていると、どうしても構造の話だけになってしまいます。しかし実際の身体は、神経系や自律神経系、呼吸、ストレス、睡眠など、さまざまな要素が関係しています。だからこそ、「筋肉が硬いから緩める」だけではなく、「なぜその身体は、その状態になっているのか」という視点を持つことが大切なのだと思います。今回の勉強会を通して、身体を構造だけでなく、機能や神経系とのつながりまで含めて考えることの重要性を改めて感じました。
今回学んだことを、これからの現場でどのように活かしていくのか。その一つが、現在サポートしている障害馬術選手、内藤馨子選手の身体です。(前回ご紹介した生涯馬術の選手)内藤選手はジュニア時代から障害馬術の競技に取り組み、2011年の全日本ジュニア障害馬術大会ではチルドレンライダー標準競技で2位に入賞するなど、これまで国内で多くの競技経験を積み重ねてきました。現在は活動の拠点をオランダに移し、ヨーロッパの競技環境の中でさらに経験を積みながら、日本代表を目指して挑戦を続けています。私は現在、内藤選手の身体のケアとトレーニングをサポートしています。内藤選手については前回のブログでも詳しく紹介していますので、前回のブログもぜひ見てください。
障害馬術という競技を外から見ると、馬が障害物を飛び越えることに目が行きます。しかし、実際には馬と騎手が一つのチームとなり、非常に細かなコミュニケーションを取りながら競技を行っています。騎手が身体を固めすぎてしまえば馬の動きを邪魔してしまいます。逆に、身体が不安定であれば、必要なタイミングで馬に正確な情報を伝えることが難しくなります。つまり、安定しているけれど固まっていない、力を使っているけれど余計な力は入っていない、というバランスが非常に重要になります。だからこそ、馬術選手の身体を考えるときには、単純に筋力をつければいいという話ではありません。身体のどこが動いていて、どこが安定しているのか。どこに余計な緊張があるのか。左右で違いはないか。呼吸はどうなっているのか。馬に乗っているときと地上で動いているときに違いはあるのか。そうした細かな部分を見ながら、トレーニングとケアを組み合わせていく必要があります。
今回のオステオパシー勉強会を通して、私自身が改めて感じたのは、身体を整えることは、身体を強くすることだけではないということです。もちろん、アスリートにとって筋力や体力は重要です。しかし、それと同じくらい、必要なところが動くこと、必要なところが安定すること、余計な緊張がないこと、自分の身体を感じられること、状況に合わせて身体を変化させられることも重要です。特に馬術のように、自分一人で完結する競技ではなく、馬という大きな存在と一緒に動く競技では、この身体の自由度がとても大切になります。今回の勉強会では、口腔内から外側翼突筋、内側翼突筋へ。そこから蝶形骨、前頭骨、前頭部、篩骨へ。そして神経系や視床下部という視点へ。一見すると、それぞれ全く違う場所の話に見えます。しかし、私にとって今回の勉強会の一番大きなテーマは、「身体を部分ではなく、全体として見る」ということでした。痛みがある場所だけを見る。動きが悪い関節だけを見る。硬くなっている筋肉だけを見る。それだけではなく、その場所が身体全体の中でどのような役割を持っているのかを考える。そして、少しアプローチを変えたときに、身体全体がどう反応するのかを観察する。この視点を持つことで、ケアやトレーニングの幅はさらに広がっていくと思います。
ドイツで活動していると、日本にいるときとは違った環境や考え方に触れる機会があります。今回のようにフランクフルトで先生から直接学ぶ機会も、自分自身の技術や考え方を見直す大切な時間です。一度学んだから終わりではなく、実際の現場で選手の身体を見て、試して、変化を感じて、また勉強する。その繰り返しの中で、自分自身の身体を見る目も少しずつ変わっていくのだと思います。特にアスリートの身体は、一人ひとり違います。同じ競技をしていても、身体の使い方も、得意な動きも、苦手な動きも、抱えている課題も違います。だからこそ、「この方法をすれば全員に同じ結果が出る」という考え方ではなく、その人の身体を見て、その人に必要なものを考えることが大切です。今回の学びも、そうした日々の現場につなげていきたいと思います。
そして、勉強会の後にはフランクフルトで親睦会も行いました。学びの場を終えた後に、いろいろな話をしながら時間を共有することで、普段の勉強会とはまた違った刺激をもらうことができました。同じように身体について学び、より良いものを提供したいという思いを持つ方々と話をすることで、自分自身も改めて気持ちが引き締まりました。こうした時間を過ごすと、「まだまだ自分も学ばなければいけない」と感じると同時に、「もっと頑張りたい」という気持ちも強くなります。今、自分が関わらせていただいているクライアントさん一人ひとりに、より良いケアやトレーニングを届けたい。そして、ヨーロッパで競技に挑戦している、より多くの選手たちの力になれるようになりたい。そのためには、自分自身が学び続け、技術を磨き、経験を積み重ねていくしかありません。今回の勉強会と親睦会を通して、改めて自分がこの仕事をしている意味や、これから目指していきたい方向について考えることができました。目の前のクライアントさんを大切にしながら、一つひとつの仕事に向き合う。そして、その先にはもっと大きな目標を持っていたいと思います。
志は高く、まだまだ学ぶことはたくさんありますが、現状に満足することなく、自分自身も成長し続けたいと思います。そして、ドイツをはじめヨーロッパで頑張っている選手たち、そして日々身体と向き合っている多くのクライアントさんのために、自分にできることを一つずつ増やしていきたいと思います。今回フランクフルトでいただいた学びと刺激を、これからの現場にしっかりとつなげていきます。




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