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スポーツ選手の筋損傷に対する高気圧酸素療法のMRIによる検討

 学会・講演会のご報告

2006/11/03

[目的]2004年7月よりスポーツ選手の筋損傷に対し高気圧酸素療法を行っている。今回我々はその治療効果をMRIにて検討したので報告する。

[方法]対象は筋損傷でクリニックを受診したスポーツ選手のうち筋実質に血腫を認め高気圧酸素療法(HBO)を行った10例とした。性別は男性8例、女性2例、年齢は15歳~47歳(平均25.1歳)であった。受傷スポーツはサッカー4例、野球3例、バレー2例、ラグビー1例であった。受傷筋はハムストリング2例、内側広筋2例、外側広筋、中間広筋、半腱様筋、大腿直筋、股関節転筋、腹直筋それぞれ1例であった。HBO施行内容は7例が20ATA60で3例が15ATA45であった。調査項目は、HBO施行期間・回数、HBO施行後のvisual analog scale(VAS)、HBO施行前後のMRIにて最大損傷部位横断像の面積を計測しHBO施行前を100とした施行後の変化率である。

[結果]HBO施行期間は4日間から11日間(平均6.4日間)HBO施行回数は3回~6回(平均3.9回)であった。VAS(10点満点)はHBO施行後0~7(平均3.1)と改善していた。MRIによる筋断面積変化はHBO施行後80.0(P<0.001)であり統計学的に有意に減少した。

[考察]従来、HBOは一酸化炭素中毒、熱傷、脳外科疾患、潜水病など救急医療手段として実績をあげてきた。スポーツ障害に対してはじめに試みられたのは、1980年代後半スコットランドのプロサッカー選手やゴルフ選手に対してである。Jamesらは、予想されるスポーツ損傷の罹病期間を70%も短縮することができたと報告している。今回の結果においても受傷後1週間に4回程度HBOを利用することにより腫脹した筋の断面積は20%減少できた。HBOが局所的損傷、血腫によって低酸素状態になった筋組織の治癒促進や浮腫軽減に有効であることが示唆された。しかし、今後も理論的な背景を理解し施行する時期や回数などを考慮する必要がある。

[結語]HBOは筋実質に出血を伴う筋損傷に対し早期腫脹改善に有効であった。

 

飛翔会の整形外科クリニック


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