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スポーツドクターコラム

No.31「腰椎分離症は必ずしも競技復帰を妨げる障害ではない」

2006/05/10

腰椎分離症

2026/02/06 Q&A追記 成長期の選手が慢性の腰痛を訴えた場合、まず疑われるのが腰椎分離症です。この障害は、腰椎の後方にある椎弓と呼ばれる骨が分離した状態のことを言います。椎弓の先端にある骨端線(骨の成長を担う軟骨)が、運動時の負荷によって成長していなかったり、分離したまま骨化しているのです。ただし成長期を過ぎた大人の分離症は、骨が骨化したあとに亀裂が入る、疲労骨折の可能性も考えられます。 分離症は完全に骨が分離している場合ならば、X線検査で容易に発見できます。初期段階ではMRIが有効です。ただ、検査の結果分離症が見つかったとしても、その選手に必ずしも自覚症状があるとは限りません。痛みを感じない場合もあります。Jリーグ某チームの平成13年度メディカルチェックでは、腰椎分離、もしくは腰椎すべり症(骨の分離が環状になっている椎弓の両側にみられ、椎体が前方へ移動する障害)は30%と高率に認められました。しかし、シーズン中に腰痛が原因で1ヵ月以上の長期間、スポーツ復帰が困難であった選手は存在しなかった、との報告もあります。ですから腰椎分離症は、自分でしっかりと調整しながらトレーニングを行えば、競技を続けることも可能な障害と言えます。 もちろん早期発見、早期治療は大切です。すべり症に発展すると神経が圧迫され、足に力が入らないなど、症状が悪化することも考えられます。以前は民間療法で治療を行って競技を続けたため、すべり症に発展した例も数多く見られました。ですから専門医で、できるだけ早く受診するよう心掛けましょう。 治療法は、まず痛みを軽減させるために局所の安静をはかる必要があります。この間、歩行が可能な選手はウォーキングをしたり、上半身の筋トレをすることも可能です。できるだけ体力の維持に努めましょう。 昔はギプスなどで固定し、長期に渡って競技を休止させていた時期もありました。しかし、例え安静にしていたとしても、必ずしも骨が癒合するとは限りません。分離部分の骨癒合が完成されていないにも関わらず、腰痛が消失する症例も、数多く示されています。安静が必要な期間は症例によって一定していませんが、腰椎分離症がスポーツ復帰を妨げる要因にはなりません。 この障害を引き起こす原因の1つが運動時に伴う回旋動作と考えられています。体幹の回旋に関わる筋肉の強化を考慮に入れながら、ストレッチやトレーニングを行い普段から予防することも大切です。 スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 腰椎分離症とは、どのような状態ですか?
A. 腰椎分離症とは、腰の骨(腰椎)の後方にある「椎弓」と呼ばれる部分が分離している状態を指します。 成長期では、骨の成長を担う骨端線に繰り返し負荷がかかることで、骨が十分に成長しないまま分離することがあります。 一方、成長期を過ぎた成人では、疲労骨折として生じる場合もあります。
Q2. 腰椎分離症は、必ず腰痛が出る病気ですか?
A. 必ずしも痛みが出るとは限りません。 検査で腰椎分離症が見つかっても、本人に自覚症状がまったくないケースも少なくありません。 実際に、トップレベルの競技選手でも分離症を有しながら、シーズンを通して大きな支障なく競技を続けている例が報告されています。
Q3. 成長期の選手で腰痛がある場合、なぜ腰椎分離症が疑われるのですか?
A. 成長期は骨が未完成で、運動による負荷の影響を受けやすいためです。 特に、ジャンプや反復動作、体幹の回旋を多く含む競技では、腰椎に繰り返しストレスがかかり、分離症が起こりやすいと考えられています。
Q4. 腰椎分離症は、どのように発見・診断されますか?
A. 分離が完成している場合はX線検査で確認できることが多いですが、初期段階ではX線では分からないことがあります。 その場合、MRI検査が有効です。腰痛が続く場合や、成長期の選手で違和感がある場合には、早めに専門医を受診することが重要です。
Q5. 腰椎分離症が見つかったら、すぐに競技を中止しなければなりませんか?
A. 必ずしも競技中止が必要になるわけではありません。 症状の程度や競技内容によって対応は異なりますが、状態を正しく把握し、トレーニング量や内容を調整しながら競技を続けられるケースも多くあります。
Q6. 昔はギプスで固定して長期間休ませていたと聞きましたが、今も同じですか?
A. 現在では、必ずしも長期間の固定や競技休止が最善とは考えられていません。 安静にしていても骨が必ず癒合するとは限らず、分離が残ったままでも痛みが消失する症例も多く報告されています。 症例に応じた柔軟な対応が重要です。
Q7. 腰椎分離症があっても、スポーツ復帰は可能ですか?
A. はい、可能なケースは少なくありません。 腰椎分離症は、適切に状態を管理しながらトレーニングを行えば、競技復帰や競技継続を妨げる障害ではないと考えられています。
Q8. 放置すると、どのような問題が起こる可能性がありますか?
A. 分離症が進行して腰椎すべり症に発展すると、神経が圧迫され、下肢の脱力やしびれなどの症状が出ることがあります。 痛みが軽いからといって放置せず、定期的な評価が重要です。
Q9. 腰椎分離症の治療では、どのような点が重視されますか?
A. まずは痛みを抑えるための局所安静が重要です。 その間も、可能な範囲でウォーキングや上半身のトレーニングなどを行い、体力を維持することが推奨されます。
Q10. 骨が癒合しなければ、治ったとは言えないのでしょうか?
A. 必ずしもそうではありません。 骨癒合が完成していなくても、痛みが消失し、競技に支障がなくなるケースは数多く存在します。 重要なのは、症状と機能の回復です。
Q11. 腰椎分離症を予防するために、日常的にできることはありますか?
A. 体幹の回旋動作に関わる筋肉の強化や、柔軟性を保つストレッチが予防に役立つと考えられています。 日頃から身体の使い方を意識し、無理な負荷を避けることが大切です。
Q12. 自分で分離症かどうか判断することはできますか?
A. 自己判断はおすすめできません。 腰痛の原因はさまざまであり、症状の有無や強さだけで分離症を判断することは困難です。 気になる症状がある場合は、必ず専門医を受診してください。
Q13. 腰椎分離症は、すべり症に進行することがありますか?
A. はい、すべてではありませんが、腰椎分離症が腰椎すべり症へ進行するケースはあります。 分離した椎弓によって椎体の安定性が低下し、腰の骨(椎体)が前方へずれてしまう状態を「腰椎分離すべり症」と呼びます。
Q14. どのような場合に、分離症がすべり症へ進行しやすいのですか?
A. 以下のような条件が重なると、進行のリスクが高まると考えられています。
  • 成長期に強い運動負荷が長期間続いている
  • 痛みを我慢して無理な練習を継続している
  • 分離が両側にあり、腰椎の安定性が低下している
  • 体幹筋力や柔軟性の低下がある
ただし、分離症があっても必ずすべり症に進行するわけではありません。
Q15. 腰椎分離すべり症になると、どのような症状が出ますか?
A. 分離症のみの場合と比べて、次のような症状が出ることがあります。
  • 腰痛が持続しやすくなる
  • 長時間立っていると腰がつらくなる
  • 足に力が入りにくい、違和感がある
  • 太ももやふくらはぎにしびれを感じる
これらは、ずれた骨によって神経が圧迫されることで生じる症状です。
Q16. 痛みが軽くても、すべり症が進行していることはありますか?
A. はい、あります。症状の強さと骨の状態は必ずしも一致しません。 痛みが軽くても、画像検査ではすべりが進行しているケースもあり、症状だけで判断することは危険です。
Q17. 分離すべり症になった場合、競技復帰は難しくなりますか?
A. 一概に「できない」とは言えません。 すべりの程度や症状、競技内容によって対応は異なりますが、 状態を正確に評価し、適切な管理とトレーニング調整を行えば競技を続けられるケースもあります。
Q18. 分離症の段階で気をつけるべきサインはありますか?
A. 以下のような変化が見られた場合は、早めの受診が重要です。
  • 腰痛が以前より長引くようになった
  • 痛みの範囲が腰から脚に広がってきた
  • 運動後だけでなく、日常生活でも違和感が出る
  • パフォーマンスの低下を自覚する
これらは、すべり症への進行や神経症状の前兆である可能性があります。

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