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スポーツドクターコラム

No.50「内側側副靱帯損傷は接触プレーが主な原因」

2007/10/10

内側側副靱帯損傷



内側側副靱帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ膝の内側にある靱帯です。膝の4つの靱帯の中では最も太くて長く、損傷頻度が高い部位と言えます。主な損傷の原因は、強い外反力です。前十字靱帯損傷は自分で捻るなどのノンコンタクトでも起こりうるのに対し、内側側副靱帯損傷は競技中の接触プレーが多くの受傷機転となっています。


受傷直後には、まず痛みや腫れなどがみられます。高度の不安定性が残存する場合は膝関節の亜脱臼感を覚えたり、内側半月板損傷を合併していれば疼痛に加え引っかかり感を伴うこともあるでしょう。ただこの急性期の炎症が沈静化すると、膝関節の可動域が正常に回復してしまうため注意が必要です。軽度の受傷時にしっかりと治療しておかなければ靱帯が緩い状態になり、後に軽い外反力が加わった場合でも合併損傷を招く恐れがあります。


診断は、まず徒手検査で膝関節伸展位と軽度の(20?30度)屈曲位においての不安定性を調べ、重傷度を3段階に分けます。


1度損傷は、膝関節が最も緊張している完全伸展の状態でも不安定性がない場合。

2度損傷は、伸展位で不安定性がなくても軽度の屈曲で不安定性がみられる場合。

3度損傷は、伸展位でも屈曲位でも不安定性がある場合となります。


ただ生まれつき膝関節が緩い人もいるため、受傷していない方の膝と比較して診断するようにしましょう。


その他の診断方法としては、レントゲンやMRIなどがあります。大腿骨内側の骨と靱帯が付着している場所に、レントゲンでStieda陰影と呼ばれる異常陰影を確認できれば、内側側副靱帯の損傷を疑うことができます。またMRIを用いると、より詳細に損傷部位を把握することが可能です。


治療としては、重傷度が1~2度の場合、多くのケースで保存療法を適用します。1度損傷では、まず湿布や鎮痛剤の服用で疼痛と腫脹の軽減を図り、局所の安静を保つことが大切です。症状が改善した後は、大腿四頭筋を中心とした筋肉強化を図り、競技には2~3週間後から復帰できるでしょう。


2度損傷では、支柱付きサポーターまたは内外反制御付きソフトプレースを4~6週間使用します。このとき膝関節は、20~30度程度の屈曲位を維持するようにしましょう。膝を少し屈曲して、靱帯を緊張させないことが重要です。またサポーターをつけている間も体重をかけて歩くなどストレスを加えることで、靱帯の修復を促すことができます。


3度損傷でも、合併損傷がなければ2度損傷と同じように保存療法で回復を待ちます。

ただ合併損傷を起こしている場合は、手術の適応も考えなければなりません。






スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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