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スポーツドクターコラム

No.73「周囲との関係が影響する慢性疲労症候群」

2009/10/10

慢性疲労症候群



慢性疲労症候群とは、1988年に米国疾病対策センターが提唱した比較的新しい疾患で、これまでオーバートレーニング症候群と呼ばれていたものもこの診断基準に当てはまると言われています。健康な人が原因不明の強い全身倦怠感や筋肉痛、頭痛などの症状を長期間感じ続け、健全な社会生活が送れなくなるという疾病です。

原因は未だに明らかになっていませんが、脳神経系の機能障害ではないかと言われています。通常の保険診療で認められている一般臨床検査では異常は見られませんが、診断基準として「激しい疲労感のため月に数日は会社や学校を休まざるを得ないような状態が半年以上持続している(繰り返している)」「医師の診察を受けても、他に疾病がない」ことが挙げられます。遺伝的素因があって、心理的ストレスを受けたときに神経系や免疫系、内分泌系に影響を及ぼしていると考えられています。

スポーツ選手の場合、チームの不振や競技者自身の不振が原因ではなく、周囲によるプレッシャーから引き起こされると言われています。成績が悪ければレギュラーから外されるなど立場が悪くなることは当然のことですが、競技者に非がないにも関わらず、メンバーから外されたり指導者から注意を受けたりすることで発症することがあります。指導者としては激励の意味を込めた言動であっても、中にはストレスに感じる選手もいます。そのため選手全員を一様に扱うのではなく、身体的能力、精神的能力に分けて練習法や指導法を変えていくことも指導者に求められる資質なのです。

また、小中学生にとっては親の接し方が大きく影響します。子どもに夢を託し過度の期待をかけることで発症すると言われています。家庭内でストレスを感じてしまうと、心の休まる場所がありません。常にストレスを感じている人が慢性疲労症候群になりやすいので、生活の中でしっかりとオンとオフを作ることは大切です。

治療法としては、薬物療法だけでは難しいので、精神面での治療として認知行動療法と段階的運動療法を行います。認知行動療法とは自分の行動に関して何のためにどうしているかということを認識させるもので、段階的運動療法とは段階的に運動の強度を高めていくことを言います。治療段階で競技者を叱咤激励するのは逆効果。治療中には決して強要をせず、自分のペースで回復に向かわせることが求められます。スポーツ界では精神的や肉体的なストレスは避けられないものなので、自分の力で回復することでストレスを回避する力を身につけていくことが重要です。周りはあくまでもサポートするだけ。競技者が自らの力で克服しなければ慢性疲労症候群は回復しません。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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