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スポーツドクターコラム

第二期 vol.3「スポーツと突然死」

2012/03/15

突然死



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 昨年8月、当時JFLの松本山雅FCに所属していた松田直樹選手が、練習中に急性心筋梗塞で倒れ、そのまま意識が戻らず2日後に息を引き取りました。練習中とはいえピッチ上での悲劇には、チームやファンはもちろん、サッカー界で医療にたずさわる我々にも大きな衝撃を与えました。
日本代表を経験したこともある有名選手の突然死はこれまであまりなかったことですが、不幸なことに世界では多くの例が報告されています。コンフェデレーションズカップ準決勝の試合中に倒れたカメルーンのフォエ選手や、年代別スペイン代表で将来を嘱望されていたハルケ選手など、決して珍しいことではないのです。
 突然死には大きく分けて2つの原因があり、頭蓋内や脳など脳神経系の疾患と、心臓や血管などの循環器系の疾患が該当します。くも膜下出血などが前者で、心筋梗塞などが後者に当てはまることが多いのですが、その中でもスポーツの突然死は大半が循環器系の疾患を原因としており、統計では年間10万人に0・5人から2・3人が死亡しています。これは決して少ない数字ではありません。特にサッカーは1試合で10キロほどを走るため、最大酸素摂取量は非常に高く、循環器への負担が大きなスポーツです。いかにこの悲劇を防ぎ、救い出すかということは医療界でも大きな課題のひとつになっています。
サッカー選手の心臓性突然死の基礎疾患としては、肥大型心筋症や催不整脈性右室心筋症、先天性の冠動脈起始異常などが多くなっています。先天性に加え栄養の偏った食生活や喫煙などがこれらの疾患のリスクを高めるため、生活習慣の改善がそれらを防ぐ大きな手立てとなっています。
 一方、サッカーなどのスポーツにおいては、正しい検査を行うことで心臓に負担のかかるプレー中の発症を予防することが重要視されるようになってきました。イタリアでは競技前のメディカルチェックを導入することにより、突然死が90%減少したという実績もあります。どのカテゴリーにおいても運動による負担は大きいということを考えれば、カテゴリーに関係なく、精密な検査を行うことが望ましいのは言うまでもありません。
 日本サッカー協会では、松田選手の死を契機にメディカルチェックの重要性が見直されています。これまでJリーグでは5年に1度行われていましたが、12年度から新たにJFL、なでしこリーグ、Fリーグにもメディカルチェックが義務付けられました。費用の問題があるのは確かですが、人命を考えれば極力行われるべきだと考えます。
 また、いざ選手が意識不明に陥るなど緊急事態に陥ったときの対処法も重要です。呼吸停止から3分後ならば75%が蘇生可能とされていますが、5分後になれば確率は25%にまで落ちます。医師やトレーナーがいなくても、緊急時にいかに迅速に対応するかは生死に大きく関わります。12年度からすべてのカテゴリーにAEDの設置が義務付けられ、蘇生のガイドラインも改正されるなど、蘇生法や設備も見直されています。悲劇を繰り返さないためには、1人ひとりが意識を高め、人命救助の知識を身につけることも必要なのではないでしょうか。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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