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スポーツドクターコラム

第二期 VOL.6「スイング、投球時の脇腹痛」

2012/06/07

脇腹痛
2026/06/19記事更新

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脇腹の故障は体を捻る動作の多い野球選手にとって、職業病と言っても過言ではないのではないしょうか。長いプロ野球のシーズンで選手の離脱のニュースを耳にすると、脇腹の故障を原因とするものが必ずあります。それはスイング時、または投球時において選手は上半身の動きを下半身より遅らせることでタメを作ろうとするので、どうしても捻れる脇腹に負荷が掛かるのです。脇腹の損傷の代表的な症例として、肋骨の疲労骨折や腹斜筋の損傷が挙げられます。

【2026年注訳】脇腹痛の原因は一つではなく、腹斜筋や肋間筋などの筋損傷、肋骨の疲労骨折、胸椎由来の神経痛などが考えられます。痛みの場所や、投球・スイングのどの動作で痛むかによって、疑われる病態が変わります。

これらの症状の原因に目を移すと、大きく分けて2つが考えられます。1つめはフォームによるものです。打者の場合、地面に沿って水平にバットを振るレベルスイングであれば問題ありませんが、アッパースイングやダウンスイングでは肋骨の間にある肋間筋に過度の応力が加わります。肋間筋が何度も収縮する中で一部分に力が加わり過ぎると、炎症の原因となるのです。この炎症が進行すると、疲労骨折を引き起します。

【2026年注訳】本文では肋間筋への負荷を中心に説明していますが、実際には肋骨そのものへの反復ストレス、体幹の回旋、肩甲帯や腹斜筋群の牽引力など、複数の要素が重なって疲労骨折につながることがあります。

ゴルフをされる方は“明治の大砲”という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。″明治の大砲〟とは体重移動が通常とは逆になるスイングのことで、いわゆる“すくい打ち”の状態になっています。力を伝える方向と体重移動が逆になっているこのフォームは、脇腹を痛める典型的な悪い例です。

2つめは体の軸の問題です。正しいトレーニングで体幹を鍛えていないと、スイング、または投球時に体がぶれてしまいます。そうすると先程と同様に脇腹に過度の応力が掛かります。ひざや腰などに痛みを抱え回旋時に上手く体重移動ができない場合も、同様の問題が起こります。

最初に職業病といいましたが、スイングや投球動作のように何度も同じ動作を繰り返し一部分に応力が掛かることを“メカニカルストレス”と言います。これは針金をイメージしていただければ分かりやすいと思います。何回も針金を曲げることと伸ばすことを繰り返すせば、曲げられる部分は柔らかくなり、やがて折れてしまいます。柔らかくなった状態が炎症で、折れてしまうと骨折したと例えることができます。

打者と違い投手の場合、肋骨の疲労骨折はあまり見られません。

【2026年注訳】投手では腹斜筋など体幹部の筋損傷が多くみられますが、投手にも肋骨の疲労骨折が起こることがあります。そのため、投球時の脇腹痛では、筋損傷だけでなく肋骨疲労骨折も鑑別に入れる必要があります。

これは力の掛かる場所が野手と違うことが考えられ、肋骨より下の腹斜筋の損傷が多くなります。周辺には腹直筋や腹横筋といった筋肉がありますが、投球時に最も伸びる腹斜筋を痛めるケースが一番多いのです。

脇腹の故障でもう1つ知っておいていただきたいのが、背中のヘルニアによる神経痛です。

【2026年注訳】本文中の「背中のヘルニア」は、現在の表現では胸椎椎間板ヘルニアなど、胸椎由来の神経痛を指します。胸椎の神経が刺激されると、背中だけでなく脇腹や胸の横に痛みが出ることがあり、腹斜筋損傷や肋骨の痛みと紛らわしい場合があります。

これは柔道、レスリングやラグビーなど格闘技やコンタクトスポーツで起こりやすい障害です。背中の神経は脇腹に沿って伸びており、神経が刺激されると脇腹の痛みやそれにより呼吸が難しくなるといった症状が見られます。

脇腹の損傷についてはレントゲンでは肺や気管支に隠れて骨折線や炎症箇所が見つかりにくく、CTやMRIの検査を受けることをお勧めします。

【2026年注訳】レントゲンで異常が見つからなくても、筋損傷や疲労骨折が否定できるとは限りません。症状や診察所見に応じて、MRI、CT、超音波検査などを組み合わせて確認することがあります。

治療を施し回復を図ることはもちろん大切ですが、筋力的にバランスの取れた体で、正しいフォームでプレーすることがケガの再発を防ぐ一番の近道と言えるでしょう。

スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 野球で脇腹が痛くなる主な原因は何ですか?

A. 野球では、スイングや投球の際に体幹を強くひねる動作を繰り返します。 そのため、腹斜筋や肋間筋などの筋肉、肋骨、胸椎まわりの神経などに負担がかかり、脇腹痛が起こることがあります。

代表的なものには、腹斜筋損傷、肋間筋損傷、肋骨疲労骨折、胸椎由来の神経痛などがあります。 痛みの場所や、投球・スイングのどの動作で痛むかによって、疑われる原因は異なります。

Q2. スイング時の脇腹痛では、どのような障害が考えられますか?

A. バッティングでは、下半身の回転に対して上半身が遅れて回ることで、体幹に強いねじれが生じます。 このとき、肋骨まわりや腹斜筋に反復して負荷がかかると、筋肉の損傷や炎症、肋骨の疲労骨折につながることがあります。

特に、体の軸がぶれたフォームや、無理な体重移動を伴うフォームでは、脇腹への負担が大きくなることがあります。 痛みを我慢してスイングを続けると、症状が長引く場合があるため注意が必要です。

Q3. 投球時の脇腹痛は腹斜筋の損傷ですか?

A. 投球時の脇腹痛では、腹斜筋など体幹部の筋損傷がよくみられます。 投球動作では、体幹をひねりながら腕を振るため、腹斜筋に強い伸張ストレスがかかります。

ただし、投手にも肋骨疲労骨折が起こることがあります。 そのため、筋損傷だけでなく、肋骨の障害も鑑別に入れる必要があります。

Q4. レントゲンで異常がなくても、脇腹痛の原因があることはありますか?

A. あります。筋肉の損傷や疲労骨折の初期では、レントゲンだけでは異常が分かりにくいことがあります。

症状や診察所見によっては、MRI、CT、超音波検査などを組み合わせて確認することがあります。 特に、痛みが長引く場合、運動を再開すると痛みが戻る場合、押すと一点に強い痛みがある場合は、詳しい評価が必要になることがあります。

Q5. 脇腹痛の治療にはどのような方法がありますか?

A. 治療は、原因や損傷の程度によって異なります。 腹斜筋や肋間筋などの筋損傷では、まず痛みを悪化させる投球、スイング、体幹の強い回旋動作を控え、炎症や痛みを落ち着かせます。

必要に応じて痛み止め、湿布、物理療法などを用いながら、痛みが軽くなってきた段階で、体幹の安定性や股関節・胸椎の動きを改善するリハビリテーションを行います。

〈肋骨疲労骨折が疑われる場合〉
骨への反復負荷を避けることが重要です。 痛みを我慢して競技を続けると回復が遅れることがあるため、一定期間は投球やスイングなどの負荷を調整し、症状の改善を確認しながら段階的に復帰を進めます。

〈胸椎由来の神経痛が疑われる場合〉
筋肉や肋骨の治療とは対応が異なります。 姿勢や胸椎の動き、神経症状の有無を確認し、薬物療法、リハビリテーション、必要に応じた詳しい検査などを検討します。

脇腹痛は、筋肉、肋骨、神経、フォーム、練習量など、複数の要因が関係していることがあります。 原因によって治療や復帰までの流れが変わるため、痛みが続く場合や競技復帰を急ぐ場合は、スポーツ障害に詳しい整形外科医、またはお近くのスポーツ医の診断を受けることをおすすめします。

Q6. 脇腹痛があるときは、どのくらい運動を休む必要がありますか?

A. 休む期間は、原因や損傷の程度によって異なります。 軽い筋肉の痛みであれば比較的短期間で改善することもありますが、腹斜筋損傷や肋骨疲労骨折では、痛みが引いてからも段階的な復帰が必要です。

痛みを我慢して投球やスイングを続けると、回復が遅れたり再発したりすることがあります。 「痛みが少し軽くなったからすぐに全力で戻る」のではなく、症状の経過を確認しながら負荷を調整することが大切です。

Q7. 競技復帰はどのように進めますか?

A. 競技復帰は、痛みがなくなったかどうかだけで判断するのではなく、体幹の動き、筋力、柔軟性、フォーム、実際の投球動作やスイング動作で痛みが再現しないかを確認しながら進めます。

急に全力で復帰するのではなく、体幹トレーニング、素振り、軽いキャッチボール、段階的な投球・打撃練習へと負荷を上げていくことが大切です。

Q8. 脇腹痛を再発させないためには何が大切ですか?

A. 再発予防には、体幹の筋力だけでなく、股関節や胸椎の柔軟性、肩甲帯の動き、下半身から上半身への力の伝え方が重要です。

フォームが崩れたまま練習量を増やすと、同じ場所にメカニカルストレスが繰り返しかかり、再発しやすくなります。 痛みが改善した後も、体幹の安定性、可動域、フォーム、練習量を見直しながら段階的に競技へ戻ることが大切です。

Q9. どのような場合は早めに受診した方がよいですか?

A. 脇腹痛は、腹斜筋や肋間筋などの筋損傷、肋骨疲労骨折、胸椎由来の神経痛など、複数の要因が重なって起こることがあります。 痛みの場所だけでは原因を判断しにくい場合もあり、自己判断で運動を続けると回復が遅れたり、再発につながったりすることがあります。

強い痛みでスイングや投球ができない場合、深呼吸や咳で痛みが強くなる場合、押すと一点に鋭い痛みがある場合、痛みが長引く場合、運動を再開すると同じ痛みが戻る場合は、早めにスポーツ障害に詳しい整形外科医、またはお近くのスポーツ医に相談することをおすすめします。

また、しびれを伴う痛み、背中から脇腹へ広がる痛み、呼吸がしづらいほどの痛みがある場合も、筋肉以外の原因を含めて確認が必要です。

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