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スポーツドクターコラム

第二期 Vol.15 「競技復帰は難しい特発性大腿骨頭壊死症」

2013/03/01

特発性大腿骨頭壊死症

PDF版はコチラ 2026/02/13 Q&A追記

Jリーグ名古屋などで活躍した元日本代表の望月重良氏は、07年に現役を引退しました。その理由は特発性大腿骨頭壊死症というものでした。特発性とは原因が特定できないことを意味します。今回は選手生活を一瞬で終わらせてしまう、大腿骨頭壊死症についてお話しします。

読者のみなさんにとってはあまり馴染みのない疾患でしょうから、まずは大腿骨頭壊死症について説明するところから始めましょう。まず知っておいてほしいことは、身体の他の場所と同じように骨にも血液の循環が必要だということです。そして血液が循環すれば、必ず血流障害が起こりやすい場所があります。

大腿骨頭は軟骨に覆われていることに加え関節内に深く収まっているため、血流障害が起こりやすい場所の一つとして知られています。余談ですが、大腿骨頭は幼少期には股関節と繋がっており、成長とともに分離していきます。風邪を引いたときに股関節に痛みを感じた経験はないでしょうか。それはウイルスが血液を介して股関節に入ってくるためです。

大腿骨頭壊死症はその昔、潜函病(せんかんびょう)と言われていました。それは潜水夫が海中から急激に浮上すると、水圧により血液中の窒素が膨み、回旋動脈が詰まるためです。この疾患は決して珍しいものではなく、日本では年間およそ2000人が発症していると報告されています。

この病気に関しては、はっきりとした原因が解明されていません。正しくは血行障害が原因と分かってはいますが、なぜ大腿骨頭で血流障害が起こり発症に至るのか、そのメカニズムが分からないと言った方がいいでしょうか。

ただ、理由として考えられるのは、血液中の脂肪や血管、血液の凝固異常などです。しかし、サッカーなどのボールを蹴るスポーツは大腿骨頭や骨頭を巡る回旋動脈に負担を掛けると考えられますが、競技者数と同疾患の発生数に因果関係は見られません。

ただ、アルコールの多飲や喫煙、ステロイド剤の服用は血流障害を招く要因として知られ、大腿骨頭壊死症の遠因となっていることは事実でしょう。

先日、学会でトップアスリートの動脈血栓が報告されました。静脈に血栓ができる症例は多く報告されていますが、動脈の血栓は非常にまれです。原因としてコレステロール値の高さが挙げられます。コレステロール値の上昇は食生活のみならず、遺伝的な要因があることもここに付け加えておきます。

症状としては、初期段階では歩行時や階段の上り下りの際に痛みを感じます。さらに進行すれば骨が陥没するため、かなりの激痛を伴います。

筋力トレーニングや杖を使うことで症状を遅らせることができますが、最終的には手術をすることになります。手術により人工物に置換する場合は、耐久年数に気をつけなければいけません。年々、技術の進歩により10年から15年は持つと言われていますが、年齢を考慮して保存的治療とのバランスを取ることが必要でしょう。

もちろんそうなれば普段の生活にも支障が出るほどですから、競技の第一線からは退くことになるでしょう。

足は一生生活で使うものですから、鍛え、労り健康な足を目指しましょう。

スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 特発性大腿骨頭壊死症とはどのような病気ですか?

A. 特発性大腿骨頭壊死症とは、股関節を構成する大腿骨頭への血流が障害され、骨が壊死してしまう病気です。
「特発性」とは、明確な原因が特定できないことを意味します。血行障害が本態であることは分かっていますが、なぜ大腿骨頭で血流障害が起こるのか、その詳細なメカニズムは完全には解明されていません。

Q2. どのような症状が出ますか?

A. 初期には、歩行時や階段の上り下りなどで股関節周囲に痛みを感じることがあります。進行すると骨が陥没し、強い痛みが出たり、歩行が困難になることがあります。痛みの程度や出方には個人差があるため、気になる症状が続く場合は医師に相談してください。

Q3. どのように診断しますか?

A. 症状や診察所見に加えて、画像検査で評価します。初期にはレントゲンで変化が分かりにくいこともあるため、必要に応じてMRIなどで骨の状態や壊死の範囲を確認します。痛みが続く場合は早めに整形外科で検査を受けることが大切です。

Q4. どのような治療を行いますか?

A. 治療は病期(進行度)や壊死の範囲、痛みや生活への支障の程度によって異なります。初期では、負担を減らすための生活指導、杖の使用、筋力トレーニングなどの保存療法で症状の進行を遅らせることを目指します。進行して骨の陥没が強い場合は、手術(人工股関節置換術など)が検討されます。治療方針は医師が検査結果をもとに個別に判断します。

Q5. 競技や運動は続けてもよいですか?

A. 病期や痛みの程度によって異なります。無理に負荷をかけると痛みが増したり、進行を早める可能性があります。運動を続ける場合でも、内容や負荷を調整する必要があります。自己判断で続けず、必ず医師の診察・評価に基づいて判断してください。

Q6. 放置するとどうなりますか?

A. 進行すると大腿骨頭が陥没し、股関節の変形が進むことで痛みが強くなり、日常生活に支障が出ることがあります。最終的に手術が必要になる場合もあります。早期の段階で評価し、状態に合った治療や生活調整を行うことが重要です。

Q7. 受診の目安はありますか?

A. 歩くと股関節が痛い、階段の上り下りで痛みが続く、痛みで日常生活に支障が出ている場合は、整形外科を受診してください。早期ほど画像検査(MRIなど)が有用になることがあるため、気になる症状が続く場合は早めの相談が勧められます。

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