スポーツドクターコラム
第二期 Vol.18「2選手を襲った膝内側側副靭帯損傷」
2013/05/17
膝内側側副靭帯損傷
PDF版はコチラ 2026/02/12 Q&A追記昨季、悲願のリーグ制覇を成し遂げたサンフレッチェは、今季もここまで連覇を狙える位置につけています。ただ、今季は開幕直後から離脱者が続出し、苦戦を強いられたことも事実です。今回はその中でも清水航平選手、森﨑浩司選手が負った『膝内側側副靭帯損傷』を取り上げたいと思います。
この疾患は膝靭帯の損傷の中でも最も発症頻度が高いもので、サッカーだけでなく、アメフトやラグビーなどのコンタクトスポーツの他、バスケットボールやテニスなど急な方向転換を必要とする競技において見られます。発症原因はタックルなどの外力によってひざが強制的に外反されたときと、ひざを内側に強く捻ったときの2つに大きく分けられます。このときに、ひざにある4本の靭帯のうち、大腿骨と脛骨を結んでいる内側側副靭帯が裂けたり、重度の場合は完全に断裂してしまうことを『膝内側側副靭帯損傷』と言います。
症状は3段階に分類される損傷度によって異なりますが、急性期(受傷後3週間程度)にはひざの痛みと可動域に制限が見られます。その後、ひざの腫れや不安定感、ぐらつきなどが症状として現れます。特に不安定感、ぐらつきはⅡ度(中等症)~Ⅲ度(重症)で顕著に見られ、歩行中にひざの関節が外れそうになったり、踏ん張りがきかなくなります。そのため、スポーツだけでなく日常生活でも大きな障害となります。また、Ⅲ度の場合は前十字靭帯損傷や半月板損傷を併発(合併損傷)することがほとんどで、前十字靭帯損傷を負うとひざが突如折れるようなひざ崩れ症状が見られます。
診断は徒手検査によってひざ関節に圧力を加えることで、簡単に行うことができます。しかし、受傷直後など痛みが強いときに患部に圧力をかけてしまうと症状を悪化させてしまうことがあるため、MRI検査で症状を正確に診断すべきです。MRI検査では、レントゲンでは写らない靭帯がはっきりと確認できます。ただし、症状がⅢ度の可能性もあるため、その場で伸展位(ひざを伸ばした状態)での外反動揺性(ひざのぐらつき)をまず確認しておくべきでしょう。
次に治療についてですが、Ⅲ度の場合は内側側副靭帯の回復を待って、半月板や前十字靭帯再建の手術を行います。手術が靭帯の回復を待ってからになるのは、手術中の動作によって損傷がさらに悪化することを防ぐためです。
一方、それ以外の場合はサポーターで固定するなど保存療法で治療を進めます。初期に適切な治療、ケアを行えば靭帯は比較的安定しますし、競技復帰もⅠ度であれば約2~3週間、Ⅱ度であれば約2ヵ月で可能となります。しかし、陳旧化(急性期に処置を行わなかったため靭帯が伸びた状態)してしまうと半月板損傷などを生じ、痛みが慢性化するため最終的に手術が必要となってしまいます。また、注意していただきたいのは「痛みがなくなる=復帰可能」ではありません。高校生などに多く見られるのですが痛みがなくなった途端、競技に復帰して症状を悪化させてしまうことがあります。
冒頭に挙げたように、この症状はスポーツの現場では非常に発症頻度が高いものですが、損傷の程度など診断を正確に行って初期から適切な治療を行うことが大切です。それが早期復帰や悪化防止に繋がります。
スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 膝内側側副靭帯損傷とはどのようなケガですか?
A. 膝内側側副靭帯損傷とは、大腿骨と脛骨をつなぐ内側側副靭帯が外力によって損傷するケガです。 タックルや接触プレーなどで膝が外側に押される動きや、膝を内側に強く捻る動作によって発症します。 サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツだけでなく、方向転換の多い競技でも見られます。
Q2. 膝内側側副靭帯損傷では、どのような治療を行いますか?
A. 治療は損傷の程度や、他の靭帯・半月板損傷を伴っているかどうかによって異なります。 多くの場合は手術を行わず、保存療法で治療を進めます。
サポーターや装具による固定、安静や冷却、症状が落ち着いてからのリハビリテーションを組み合わせ、 膝の安定性と機能の回復を図ります。
Q3. 手術が必要になるのはどのような場合ですか?
A. Ⅲ度(重症)の損傷や、前十字靭帯損傷や半月板損傷などを合併している場合には、手術が検討されることがあります。
ただし、内側側副靭帯そのものは保存的に回復を待ち、 その後に必要に応じて他の靭帯や半月板の手術を行うのが一般的です。
Q4. MRI検査は必ず必要ですか?
A. 痛みが強い急性期や、Ⅲ度の損傷、合併損傷が疑われる場合にはMRI検査が有用です。 MRIでは、レントゲンでは確認できない靭帯や半月板の状態を正確に評価できます。
痛みが強い時期に無理な徒手検査を行わないためにも、画像検査が重要となる場合があります。
Q5. どのくらいで競技復帰できますか?
A. 競技復帰の目安は損傷の程度によって異なります。
Ⅰ度では約2〜3週間、Ⅱ度では約2か月が一つの目安となります。 Ⅲ度の場合は、損傷の状態や合併損傷の有無を踏まえて個別に判断されます。
Q6. 痛みがなくなれば、すぐに運動やスポーツを再開してもよいですか?
A. いいえ。痛みがなくなった=競技復帰可能ではありません。
痛みが軽減しても、膝の不安定性が残っていることがあります。 膝の状態を評価しながら、段階的に復帰を判断することが重要です。
Q7. 治療せずに放置するとどうなりますか?
A. 急性期に適切な治療を行わずに放置すると、靭帯が伸びた状態で治癒してしまう「陳旧化」を起こすことがあります。
その結果、半月板損傷を合併したり、膝の不安定感や痛みが慢性化し、 最終的に手術が必要になる可能性もあります。
飛翔会の整形外科クリニック












