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スポーツドクターコラム

No.20「野球選手における肘の故障~後編~」

2005/05/10

肘の故障



小・中学生の成長期の選手に起こる野球肘には、内側、外側、肘頭の3タイプがあります。しかしこれらの症状が完治しないまま高校、大学、社会人やプロと野球を続けた場合、軟骨が剥がれて関節の中を動き回る関節内遊離体(関節ねずみ)や、骨の一部がささくれて棘のようにとがる骨棘などの障害に発展することがあります。さらに後遺症が残存し、肘を完全に伸展できない選手もみられます。   

また成長期の野球肘は骨を損傷することが多いのですが、成長期を過ぎた段階の野球肘では、筋肉や腱を損傷する場合の方が多くなります。これは成長期の軟骨(骨端線や骨端核)が靱帯や筋肉よりも強度が弱いのに対し、大人の場合は反対に骨の方が強くなるためです。このことは野球肘に限らずスポーツ障害全般にも言えます。   

成長期を過ぎた野球肘の症状の一つと考えられるのが、プロ野球選手によくみられる尺側(内側)側副靱帯の損傷です。これは投手だけでなく、野手が投球動作を行った場合に起こることもあります。野手が練習で遠投をする時は、ボールを遠くに投げるために腕を速く強く振らなければなりません。そういった動作を繰り返すことによって肘に負担がかかり、結果的に靱帯を損傷してしまうのです。   

靱帯を断裂してしまった場合は手術を必要とすることもあるでしょう。手術療法としては修復術といった断裂した部分を縫い合わせるだけの方法もあります。しかし投手のように過度の負担を長期間に渡ってかけ、慢性的に靱帯が緩んでいたり断裂を繰り返している選手の場合、靱帯自体がもろくなってしまっているので単に縫い合わせるだけでは回復したとは言えません。最近では体の別の場所から新しく靱帯を移植して再腱をする『解剖学的再腱術』が主流になってきています。   

野球肘の症状を悪化させないためには、少しでも痛みを感じた段階で早めに専門医に診断してもらうことが大切です。その場合にはレントゲンだけではなく、より詳しく体内の状況を把握することができるMRI(磁気と電波を用いて体内などの画像を撮影する装置)での検査をお勧めします。レントゲンだけでは骨と骨端核しか写らず、成長軟骨などの状態は分からないため、症状が進行した段階でしか発見することができない場合があるからです。   

例え外側タイプの野球肘であったとしても、早期発見をすれば手術をしなくても回復に向かう場合もありますから、早めの診断を受けるようにしましょう。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。



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