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No.33「アキレス腱断裂は練習前後の処置で防ごう」

 スポーツドクターコラム

2006/07/09

アキレス腱断裂



下腿の内側と外側にある腓腹筋とひらめ筋についている筋を、アキレス腱と呼びます。アキレス腱に負担のかかる運動を行う場合は、どの競技でも腱断裂の可能性があると言えるでしょう。中でも多いのは、運動会の父兄競技やママさんバレーなどです。週1回ないし月1回程度しか運動を行っていない人が、急に腓腹筋を強く収縮させたりストレッチをした場合に起こりやすくなります。特に中高年の方は注意が必要です。周囲の膜から腱の中に向けて血管が入り込んでいるため、加齢によって血のめぐりが悪くなると、腱自体が衰退し、断裂しやすくなるのです。

毎日のように運動しているスポーツ選手の断裂は、受傷以前から腱の微小損傷や変性が生じていた場合が多々みられます。炎症を繰り返していると腱が固くなり、内部が変性を起こして断裂しやすい状態になるのです。実際に断裂すると、患者はアキレス腱を他人に後ろから蹴られたり棒で殴られた感覚を覚えることが多いようです。

診断は、うつ伏せになり、脚をリラックスさせた状態で行います。通常は下腿中央をつかむと、足首から下の部分が反応して動くのですが、腱が切れている場合は反応しません。またアキレス腱の踵の付着部より2?6センチにくぼみが見られ、その部分を押したときに痛みを感じることでも診断できます。

気を付けたいのは、断裂していても、べた足歩行はできてしまう点です。つま先立ちは不可能ですが、患者が歩いているからといって断裂を否定してはいけません。

治療法は、保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法は、足を自然下垂位の状態にして断裂した腱の部分を近づけ、ギブスで固定する方法です。ただサッカーやラグビーなど、アキレス腱に過度の負担がかかる競技をしている選手やトップアスリートは、「保存療法では再断裂の可能性が3割近くに及ぶ」という報告もあるため、手術療法を選択する場合が多いようです。

いずれの治療法にしても、運動復帰には5?6ヵ月程度を要します。ですから断裂を起こす前に練習前後のストレッチやアイシングなどの処置をし、アキレス腱炎、もしくは周囲炎のうちに治療を行いましょう。

以前はアキレス腱の炎症に対して、ステロイドという注射を打つ治療を選択していた医師もいました。しかし現在は、スポーツドクターの常識として、アキレス腱やその周囲にステロイドを打つことは禁忌とされています。治療を行う際には、その方法にも十分注意が必要です。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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