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スポーツドクターコラム

変形性膝関節症で膝は動かしていい?― 軽い運動が痛みを和らげる理由 ―

2026/01/30

最近、テレビ番組などで「変形性膝関節症では、膝を低い負荷で動かすと軟骨が回復する」といった内容が紹介される機会が増えています。こうした放送をご覧になり、「膝は動かしても大丈夫なのか?」「軟骨は本当に元に戻るのか?」と疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。 ただ、実際の外来診療では、テレビの内容だけで単純に判断できないケースも少なくありません。まずは、現在の医療で分かっていることを整理してお伝えします。

軟骨は「新品に戻る」わけではありません

前提としてお伝えしたいのは、「軟骨そのものが新品の状態に戻る」という意味ではない、ということです。 変形性膝関節症では、加齢や長年の負担によって関節の軟骨がすり減っていきますが、現時点では自然に軟骨を完全再生させる方法は確立されていません。 一方で、膝を軽い負荷でゆっくり動かすことには、医学的に意味があります。膝を動かすことで関節の中にある関節液(潤滑液)が循環し、軟骨の栄養状態が保たれやすくなります。その結果、炎症が落ち着きやすくなり、膝の動きが改善して痛みが軽減することが分かっています。

「動かさない」ことで起きる問題

痛みを恐れて膝を動かさない生活が続くと、関節液の循環が悪くなり、太ももの筋力が低下します。 筋力が落ちると、歩行時に膝へ直接かかる負担が増え、結果的に痛みが強くなることがあります。

現在の医療では、「痛いから動かさない」よりも、「痛みのない範囲で、ゆっくり動かす」ことが膝には良い、という考え方が主流です。

実際の診察では、どこを見て判断するか

外来診療では、「動かしてよいかどうか」を一律に決めることはしません。 膝の可動域、腫れの有無、歩行後に痛みが増えるかどうか、日常生活での困りごとなどを総合して判断します。 レントゲンの所見だけで運動量を決めることは、ほとんどありません。 同じ「変形性膝関節症」という診断名でも、今は運動を増やしたほうがよい方と、いったん負荷を下げたほうがよい両方のケースがあります。この見極めが大変重要なのです。

日常生活で取り入れやすい運動

取り入れやすい運動としては、軽い自転車こぎ、椅子に座って膝をゆっくり伸ばす運動、浅い角度でのスクワットなどがあります。いずれも「少し物足りない」と感じる程度の刺激で十分です。強い運動ほど良いわけではありません。丁寧に、ゆっくり行うことが大切です。 また、膝を大きく動かさずに筋肉に力を入れる「等尺性(アイソメトリック)運動」も有効です。 椅子に座り、すねのあたりで両足を軽く交差させ、前側の足は前へ、後ろ側の足は後ろへ力を入れます。膝の角度は変えず、5〜10秒ほど力を入れては抜く動作を繰り返します。 膝への負担を抑えながら、太ももの前後の筋肉を働かせることができます。

インソール(靴の中敷き)について

テレビ等で、インソールについても紹介されることがあります。 膝の内側に負担が集中しやすいタイプの変形性膝関節症では、歩行時の体重のかかり方を調整することで痛みが軽減する場合があります。市販のインソールは汎用的な形状のため、十分な効果が得られないこともあります。一方、医療機関で足の形や膝のアライメント(骨の並び)に合わせて作成する医療用インソールは、歩行が安定しやすく、痛みが軽減するケースがあります。症状によっては、医師の処方と義肢装具士の製作を条件に、保険適用となる場合もあります。

「正しく動かす」ことが大切です

「膝は動かすと悪くなる」と思い込んでいる方は少なくありません。 しかし現在の医療では、「正しく動かすことで、むしろ膝が楽になる」ケースが多いことが分かっています。 どの程度の運動が適しているかは、膝の状態や生活背景によって異なります。診察で膝の状態を確認しながら、「今はどこまで動かしてよいか」を一緒に決めていくことが大切です。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. 膝を動かすと悪化しませんか?

A. 強い痛みが出る動作を無理に行うと悪化することがありますが、「痛みのない範囲でゆっくり動かす」ことで関節液の循環が良くなり、痛みが軽減しやすくなります。 ただし、膝の状態によって適切な運動量は異なるため、医師の診察で確認することが重要です。

Q2. 運動は毎日したほうが良いですか?

A. 強度よりも「継続」が大切です。短時間でもよいので、負担の少ない運動を習慣的に続けることが効果的です。 痛みが出る場合や不安がある場合は、医師と相談しながら内容や頻度を調整してください。

Q3. インソールは市販のものでも大丈夫ですか?

A. 症状が軽い場合は市販品で対応できることもありますが、痛みが続く場合は足や膝の状態に合わせた医療用インソールが勧められることがあります。 膝の変形や歩行の癖によって適応が異なるため、医師の評価を受けることが望ましいです。

Q4. どんな靴を選べば良いですか?

A. かかとをしっかり保持でき、ソールに適度なクッション性がある靴を選ぶと膝の負担が減りやすくなります。 症状や歩行状態によって適した靴は異なるため、必要に応じて医師に相談してください。

Q5. 膝が痛いときにできる安全な筋トレはありますか?

A. 膝を大きく動かさずに行う等尺性(アイソメトリック)運動が適している場合もありますが、 必ず医師の診察で膝の状態を確認したうえで、痛みのない範囲で行うことが大切です。

飛翔会の整形外科クリニック


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