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No.65「痺れや感覚の麻痺が生じる血行障害」

 スポーツドクターコラム

2009/02/10

血行障害



つま先から頭まで全ての組織に送られている血液。その血液の流れに異常が生じる疾患を血行障害と言います。

血行障害にはいくつかの種類があります。その中でも野球、特に投手と捕手に陥りやすいのが、血管が縮んだり細くなる血行障害です。フォークを多投する投手はボールを人差し指と中指で挟み、互いの指を幾度となく強くこすり上げるため、挟む指の血管がだんだんと細くなり、縮むことで血の流れが悪くなるのです。また、球を受ける捕手も人差し指と中指の付け根で何度も衝撃を受け続けるため、その箇所が刺激され血液が届かなくなることがあります。

また、下肢や上腕などの静脈に血栓ができ、血の流れが滞る疾患を静脈血栓塞栓症と言います。原因としては、長時間同じ姿勢で居続けることによって起こる血流鬱帯や、血液凝固の亢進(血が固まりやすくなること)、脱水などがあります。血流鬱帯については、以前このコラムで紹介したエコノミークラス症候群(現在はロングフライト血栓症とも呼ばれる)が例に挙げられます。

 さらに、身体を動かすスポーツ選手でも発症することがあるように、発症しやすい体質の人は要注意です。症状としては深部に血栓ができた場合は痺れたり、感覚がなくなったり、皮膚の変色を起こしたりします。また、休んでいる時は楽な状態でも、走ってみると足がだるくなるなどさまざまな可能性が考えられます。さらに、静脈に血栓ができた場合は、その静脈と皮膚に炎症が表れ、血栓性静脈炎を引き起こすこともあります。そして、血栓ができる場所によっては肺梗塞や脳梗塞、心筋梗塞に陥り、危険な状態になることも考えられます。これらの可能性を常に頭に入れておき、疑わしいと感じた際には専門医に診てもらいましょう。

 また、水分補給を怠ることで発症することもあります。「喉が渇いていないから水分を摂らなくてもいい」という考え方は大きな間違いで、喉を潤すためだけでなく、血液の流れを良くするために摂ることを意識しましょう。スポーツ選手でなくとも、乗り物での移動時にはこまめな水分補給を心掛けることが大切です。

 治療は循環動態の改善と血栓の除去を目的に行います。薬剤を用いて血液を固まりにくくする「坑凝固療法」や、血栓を溶かす「血栓溶解療法」が一般的です。さらにひどい場合には、カテーテルと呼ばれる細い管を用いて薬剤を投入したり、血栓を砕いたりして除去する「血管内治療法(IVR)」もあります。それでも改善されない場合は手術療法を選択することになります。血行障害の程度を診断し、医師との相談の上で治療方法について検討することが大切になります。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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