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スポーツドクターコラム

第二期 Vol.16「致死率50%超のセカンドインパクトシンドローム」

2013/03/23

セカンドインパクトシンドローム

PDF版はコチラ 2026/02/13 Q&A追記

昨年末、スキージャンプの高梨沙羅選手が練習中に転倒し脳震盪と診断されました。大事には至らなかったものの、多くの方が心配されたのではないでしょうか。脳震盪というのはアメリカンフットボールやサッカーなど接触プレーの多いコンタクトスポーツで起こりやすい疾患です。脳震盪は頭部や顎付近への衝撃によって起こる脳機能障害、脳の興奮によるものです。ひと言に脳震盪といっても程度により3つに分かれます。意識消失がなく15分以内に症状が軽快するものを「軽度」、軽快に15分以上要するものを「中度」、数秒でも意識消失があるものは「重度」と判断します。軽度の脳震盪は一度目であれば競技復帰が許可されますが、二度目以降は医師の判断により競技復帰を認めない場合もあります。中でも短期間に二度の脳震盪を起こすことを「セカンドインパクトシンドローム」といい、致死率が50%を越えるケースがあります。今回はこのことについてお話ししたいと思います。

アメリカンフットボールにおける頭部外傷のアンケートでは、重症頭部外傷を起こした39例のうち、過半数を越える21例(54%)に外傷を負った前数週間以内に頭痛を主とした脳震盪の症状があったことが報告されています。このケースではおそらく最初の脳震盪を起こした際に急性硬膜下血腫を起こしていたにもかかわらず、出血が少量のため脳震盪と区別がつかず競技を続けたことが問題です。それにより脳が完全に回復する前に二度目の衝撃を受け、架橋静脈から致命的な出血を起こしていたことが考えられます。架橋静脈は硬膜の内側に存在し、脳と頭蓋骨を繋いでいます。この静脈が破綻、出血し、硬膜と脳の間に血腫が形成された状態を急性硬膜下血腫といいます。急性硬膜下血腫はスポーツにおける死亡事故の主因の一つで、受傷直後から意識障害が表れることが多く、めまいや嘔吐などを起こし、脳ヘルニアが切迫すると除脳硬直、瞳孔不同が見られ非常に危険な状態に陥ります。このようなケースでは早期に開頭し、血腫の除去が必要となりますが、症状によっては回復が難しいこともあります。選手生命という観点からもこのような状況に陥ってしまうと復帰は難しいと言わざるを得ないでしょう。

これらのことからもスポーツの現場では、脳震盪及びセカンドインパクトシンドロームに対する注意が重要です。冒頭に挙げたアメリカンフットボールなどは防具が飛躍的に進歩したこともあり、接触プレーが重大な事態を招くことは減りつつあります。また、今日では選手の安全に対する働きかけが進みFIFAやIOC、IRB(国際ラグビー評議会)などの主要4団体は脳震盪に関するガイドライン(SCAT2)を設け、脳震盪が疑われる選手の評価基準や復帰までのプログラムを明確化しています。実際にJリーグでもSCAT2を用いた医学的評価を行っており、中度以上の脳震盪を起こした選手に対しては7日間の競技復帰を禁止しています。

このように頭部への衝撃は危険が伴います。軽度の脳震盪でも症状が遅れて表れる場合もあるため、少なくとも24時間は一人にならず、安静にすることが求められます。

スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田クリニック院長 寛田 司がスポーツ医療、スポーツ障害の症状、治療について分りやすく解説します。

よくあるご質問(Q&A)

Q1. セカンドインパクトシンドロームとは何ですか?

A. セカンドインパクトシンドロームとは、脳震盪(のうしんとう)など頭部外傷から脳が十分に回復する前に、再び頭部へ衝撃が加わることで、 重篤な脳の腫れや出血を起こし、生命に関わる状態に至ることがある病態です。 まれではありますが、短期間で繰り返す頭部への衝撃は危険性が高いため、慎重な対応が必要です。

Q2. 脳震盪(のうしんとう)はどのようなケガですか?

A. 脳震盪は、頭部やあご付近への衝撃により起こる一時的な脳機能の障害です。 意識消失がない場合でも発生することがあり、頭痛、めまい、吐き気、ぼんやりする、集中しにくいなどの症状が見られます。 症状の程度や経過には個人差があるため、医師の評価が重要です。

Q3. 脳震盪が疑われた場合、競技や運動は続けてもよいですか?

A. いいえ。頭部への衝撃後に脳震盪が疑われる場合は、その時点で競技・運動を中止し、安静にして状態を確認することが基本です。 軽い症状に見えても、無理に続けると状態が悪化したり、二度目の衝撃につながる可能性があります。 復帰の可否は自己判断せず、必ず医師の診察・評価に基づいて判断してください。

Q4. どのような症状が出たら、すぐに受診すべきですか?

A. 次のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診、または救急対応が必要です。

・意識がもうろうとする、反応が鈍い
・頭痛が強くなる、または続く
・吐き気や嘔吐が出る
・めまい、ふらつきがある
・視界がぼやける、二重に見える
・手足のしびれや力が入りにくい
・様子がおかしい、受け答えが不自然

これらは重篤化の兆候である可能性があります。

これらの症状が見られない場合でも、頭部を強く打った疑いがある/脳震盪が疑われるときは注意が必要です。 受傷直後は症状が軽く見えても、数時間〜翌日に頭痛・吐き気・眠気・ぼんやり・集中しにくいなどが遅れて出ることがあります。

そのため、少なくとも24時間は一人にせず安静にし、体調の変化を観察してください。 少しでも不安がある場合や、普段と違う様子があれば、自己判断せず医療機関に相談してください(夜間や緊急性が高いと判断される場合は救急対応)。

Q5. セカンドインパクトシンドロームを防ぐには何が大切ですか?

A. 最も重要なのは、脳震盪が疑われた時点で運動を中止し、回復するまで再受傷を避けることです。 症状が軽くても、完全に回復する前の復帰は危険性を高めます。 復帰の判断は医師の診察・評価に基づき、段階的に進めることが大切です。

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