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スポーツドクターコラム

No.39「スポーツドクターが見たマーティー改革」

2006/11/10

マーティー改革



キャンプでの全体練習時間を大幅短縮したり、シーズン中にはレギュラークラスへの休養日を設けたりなど、マーティーことブラウン監督は今までのカープには見られなかった改革を幾つも行ってきました。メディアからの情報、あるいは医師仲間からの話でその内容を知るたびに私は「カープはようやくいい方向へと進み始めたな」と嬉しく思っています。

それまでとの違いをひとことで言うならば、「選手そのものを非常に大切に考える」そして「脱・精神主義」でしょうか。カープは長きにわたって「球界一の練習量」を誇ってきましたが、その厳しい練習により「鍛えられて強くなる」でなく「故障により選手の能力が損なわれてしまう」という悲劇もしばしば見受けられていたようです。

多くの医学論文で立証され、今や世界のスポーツ界全体で常識とされている事なのですが、肉体的にも精神的にも明らかに疲れている状況で「特訓」に臨んでも、技術の向上にはつながりません。むしろ逆に、身体が思うように動かない中で練習するため、思わぬケガや故障を引き起こす危険性の方がはるかに高いのです。

そこでマーティーは、それまでの『伝統』であった「徹底した反復練習により心・技・体の全てを磨く」という考え方を一掃して、練習方法を根本的に見直しました。選手一人一人が持っている最大限の能力を発揮させる事を目的と考えて、心・技・体はそれぞれ別個の方法で鍛えていく、現代のスポーツ科学では当たり前となったスタイルを取り入れたのです。

マーティーはキャンプでの全体練習を昼の14時までには終了させたようです。「それ以降の時間は選手個人が自分自身で考えて活用するためにある」というのが、マーティーの方針だったのでしょう。弱点の強化に取り組む選手、筋力強化と故障予防のためにウエイトトレーニングに充てる選手、さらには休養も含めて身体のケアに努める選手など、選手達は責任を持って取り組んでいたそうです。キャンプらしいと言える汗と泥にまみれた特守のような激しい練習が、カープのメニューからは消えたのです。

もちろんマーティーは「放任」したわけではないでしょう。むしろ練習メニューについては、コーチやトレーナーなどスタッフ全体で科学的理論に基づいたものであるかどうかを徹底的に検証した上で決定していたと聞きました。全体練習では選手の集中力が持続する範囲の時間で、密度を濃くして休憩(インターバルの回数を増やす事)が重視されていたようです。そのため選手は次の練習、そして次の日に疲れを残さずに取り組めるので、効率的に技術・戦術を向上させることが可能となったのです。あるコーチが冗談混じりに「選手よりも我々スタッフの仕事がハードになった」と話したそうですが、それが理想の形ではないかと思います。その姿勢はシーズン中に入っても変わりませんでした。

昨年はバレンタイン監督の千葉ロッテ、今季はヒルマン監督の北海道日本ハムが日本一に輝きました。両監督ともメジャーで主流となっている科学的練習方法を取り入れて強化に成功した事を考えれば、我らがカープも長かった低迷時代からの脱出が実現できるのではないかと期待しています。




スポーツドクターコラムは整形外科医師 寛田 司スポーツ医療スポーツ障害症状治療について分りやすく解説します。

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