肩関節は、小さな受け皿に大きな骨頭が乗っているだけの、例えるなら「ティーに乗ったゴルフボール」のような不安定な構造をしています。
そのため、周囲の筋肉(インナーマッスル)や靭帯のバランスが崩れると、容易に痛みや故障を引き起こします。
肩の痛みは「肩こり」、「五十肩」だけでなく、「腱板断裂」や、スポーツ選手に多い「ルーズショルダー(動揺肩)」「インピンジメント(挟み込み)」など多岐にわたります。
当院では、レントゲン・MRI・エコーを用いて、痛みの原因を詳細に診断します。単に痛みを取るだけでなく、「なぜ痛くなったのか(フォーム、筋力バランス、全身の連動性)」を分析し、根本的な機能回復を目指します。
肩の治療でのレントゲン、MRI、エコー検査
肩の痛みには、骨の変形、腱の断裂、関節の緩み、炎症、そして組織の癒着など、様々な原因が考えられます。当院では3つの検査を組み合わせることで、多角的な視点から診断を行います。
- レントゲン
- 骨の変形や脱臼、激痛の原因となる「石灰(カルシウム)の沈着」の有無を確認します。
- MRI(磁気共鳴画像撮影装置)
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レントゲンには写らない「腱板」の断裂や、関節唇損傷(SLAP損傷など)を鮮明に描出します。特に「腱板断裂」や「投球障害」の確定診断にはMRIが不可欠です。
MRI検査の詳細はこちらへ - 超音波検査(エコー)
- 筋肉や腱の動きをリアルタイムで観察します。炎症(血流信号)や「組織の滑走性(癒着)」の評価に加え、ハイドロリリース(筋膜はがし)などの注射治療を正確に行うためのガイドとしても使用します。
肩関節の主な疾患
スポーツ選手・若年層に多い疾患
- ルーズショルダー(動揺肩)
- 生まれつき関節が緩く、肩が不安定になる状態です。投球動作などで痛みが出やすく、インナーマッスル(腱板)の強化が治療の鍵となります。
- 肩峰下インピンジメント症候群
- 腕を上げた時に、骨と骨の間で腱や滑液包が挟み込まれる(衝突する)障害です。繰り返しの動作により炎症や癒着が起こり、痛みが慢性化することがあります。
- 野球肩(投球障害肩)・関節唇損傷
- 投球動作の繰り返しにより、関節のクッションである「関節唇」などが傷つく障害です。肩だけでなく、股関節や体幹の機能不全が原因となっていることも多く、全身の評価が必要です。
中高年に多い疾患
- 腱板(けんばん)断裂
- 肩を支えるインナーマッスルの腱が切れてしまう疾患です。「力が入らない」「特定の角度で痛む」といった特徴があります。完全に切れていても、リハビリで周囲の筋肉を強化することで機能回復できる場合が多くあります。
- 肩関節周囲炎(五十肩)
- 関節包が炎症を起こし、硬くなってしまう状態です。炎症期、拘縮期(固まる時期)、解凍期(緩む時期)があり、病期に合わせた治療が必要です。
治療とリハビリテーション
「次の試合に間に合わせたい」「痛みをなくして夜ぐっすり眠りたい」など、患者様によって求めるゴールは異なります。 当院のリハビリテーションでは、「患者様が設定したゴール」に向かうことを第一に考えます。 競技レベルやライフスタイル、復帰の期限などを詳しく伺った上で、医学的な判断に基づき、リハビリテーションや注射などを組み合わせた治療を目指します。
リハビリテーション
- 可動域訓練・徒手療法
- 硬くなった関節や筋肉をほぐし、可動域を広げます。
- 腱板トレーニング
- チューブ等を使用し、弱ったインナーマッスルを強化して関節を安定させます。
- 動作指導
- 投球フォームや日常生活動作の改善を行い、患部への負担を減らします。
薬物療法・注射
- 注射治療
- 痛みが強い時期には、関節内や滑液包内に炎症を抑える注射(ヒアルロン酸・ステロイド)を行い、痛みの悪循環を断ち切ります。
筋膜はがし
- エコーガイド下ハイドロリリース
- 長引く痛みの一因として、組織同士がくっつく「癒着(ゆちゃく)」が起きている場合があります。 その場合、エコーを見ながら生理食塩水等を注入し、癒着を剥がして動きを良くする(滑走性の改善)処置を行うことがあります。 注射直後の徒手療法を的確に実施することも筋膜はがしの重要なポイントとなります。











